半兵衛と官兵衛が仲良くない&ヒロインに優しくない。
ヒロインが複数の男性と関係しています。
それでも許せる方のみお進みください。
共犯者05
裏切り者の首級として、三つの首が戦場に晒されたのはそれからしばらく経ってからの事。
罪状は敵との密通。
完璧なまでに揃えられた証拠に、どの首も繋がったまま弁解する事はできなかった。
「これでようやく、城に帰れるよ」
半兵衛はううん、と大きく伸びをすると、こきこきと首を鳴らした。
対して傍らに座るの顔は晴れない。瞬きさえ忘れたように凍りつき、暗い表情で地面を見つめている。
「は嬉しくないの?」
呼びかけられてはっと顔を上げる。眼前に柔らかな笑みで見下ろす半兵衛の顔。
だが、瞳だけがぎらぎらと獲物を狙う獣の目で輝いている。
「これでは俺のモノだよ」
抱きしめられて、やはりそうなのか、と真相に気づく。
ああも狙ったように――――と関係を結んだ男だけを狙って誅したのは、やはり半兵衛の策略あっての事だったのだ。
「私が誰と寝ようと関係などなかったのではないのですか?」
問うと、そうだよ、と低い声が返ってくる。
「でもさあ、男って――――独占欲が強いらしいから」
だから赦せなくなっちゃたんだよね。
夢で他人との情事を見せつけられるのも、が半兵衛の知らぬ所で他の男に組み敷かれるのも。
いつの頃からか、見知らぬ痕が身体に残っているのを見るだけで、吐き気がした。
あの碧の瞳に映るのは、自分一人でいいと思ったら、半兵衛の刃は止まらなかった。
「処断するのは簡単だったよ。の集めた情報のおかげで、もう逃げられなかったからね。後は官兵衛殿と結託して……ね?」
元々、敵との密通を掴んでいた官兵衛には、彼らを処断する準備が整っていた。半兵衛はその手順通りに、手を下しただけだ。
だけど、と半兵衛は呟くと、の身体をとんっと押した。
柔らかい褥に身体が埋まると、覆いかぶさるように半兵衛がの身体を跨いで顔を寄せる。
「俺、あんまり他人の手の平で踊らされるのって、好きじゃないんだよね」
「何を……」
「俺を手駒にしようなんて十年早いよ」
すごむように睨み付けて、噛み付くように口付けを与えた。そのまま帯を引いて、着物の合わせ目から指先を忍ばせた。無遠慮にまさぐると陸に捕らわれた魚のように、の身体がびくりと跳ね上がる。
「俺たち四人は、本当は誰でも良かったんだ」
舌先を首筋に這わせて、耳から鎖骨への曲線を愛おしげになぞる。
だが、終着点に付けられた赤い痕は、自分の記憶にない印。それを上からかき消すように、歯を当てて噛み付いた。
「あの三人は中でも城攻めに拘ってたから、だから選ばれたんでしょう? 敵との密通はの策だよね。もともと本心などではなくて、見せ掛けの密通。大方、敵が呼応したらそこを突いて城を攻めるように進言したんじゃないの?」
噛み付かれた痛みに、の喉がひゅうと音を鳴らす。
白い肌に赤い鮮血が、じんわりと滲む。
「四人目は――――それこそ誰でも良かったんだ。さすがに官兵衛殿が直に手を下すと勘づかれかねないから、官兵衛殿に代わり三人を始末する役。そんな道化役に俺を選ぶなんて、俺を舐めてもらっちゃ困るよ」
傷跡を掘り下げるように、あるいは傷跡をいたわるように、何度も何度も舌先がの傷をぬぐった。後から後からあふれ出す血を、まるで飲み干すかのように。
「でも、半兵衛様は私の策に乗ってくださったのでしょう……?」
熱っぽい顔でが問う。目じりに溜まった涙が、妙な色気を醸し出している。
ああ、そうだよ、と半兵衛は詰まらなそうに答える。
こんな顔をするのだから、策だと知っていても、それに乗らないわけにはいかなかった。
「男は独占欲が強いから……やがて、互いに潰しあうと分かってたんでしょ? もし四人目が現れなかったら三人の中から一人救っても良かったし、いっそ全員共倒れさせても良かった。どのみち城攻めは中止され、官兵衛殿の策は成る」
誤算と言えば、四人目が半兵衛だった事だ。
半兵衛はに溺れると同時に、独りでは溺れなかった。どうせ溺れるならも道ずれにしてやろう、という目論見があった。
互いに策と知っていながら、術中から逃げる事は叶わず共倒れするような――――そんな歪んだ糸で結ばれた関係。共犯者の紅い糸で皆が結ばれている。
「どうしてが官兵衛殿に抱かれないのか分かったよ。そんな事したら、大事な大事な官兵衛殿を死なせてしまうもんね。もしも官兵衛殿がを抱いていたら――――俺、殺してしまっていたかもしれないよ」
狂気に瞳を歪ませて半兵衛は笑った。
でも安心して、と耳元で告げる。
「約束したからね。俺は官兵衛殿を裏切らない。が俺の側に居る限り、俺は繋がれていてあげるよ」
身体は己が縛り付けても、心はに縛られている。だが、そうしている以上、二人はずっと共犯者で居続けられるのだ。
「ねえ、の狙い通り三人を始末してあげたんだから……ご褒美を頂戴?」
可愛らしく小首を傾げて、半兵衛が告げた。
そうだなぁ、と考えるような素振りをして、
「これからは毎日、俺と遊んでくれるよね?」
end
「共犯者」第五話。
皆が皆、腹に一物抱えて嘘をつく。
官兵衛エンドはこちらから。