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 これは残酷なゲームです。
 欲望と狂気と小さな祈りのゲームです――――




人狼の館14





 五日目の昼。一同が訪れたのは官兵衛の自室だった。
 共有者として場を仕切っていた官兵衛が、ついに襲撃されたのだった。


「うそ……」

半兵衛「かんべ、ど……」

「あ、あぁ…いや、いや、ああ……いやぁ……」


 がぺたりと官兵衛の血が広がる畳の上に、力なく膝を落とす。
 官兵衛の血の気の失せた指先に触れ、そこに命が無い事を感じ取ると、は頭を抱え悲鳴を上げた。


半兵衛「、落ち着いた……?」


 中央の部屋に戻り、半兵衛はの背をさすりながら問いかけた。
 からの反応はない。光の灯らない暗い瞳から、滔々と涙が零れ落ちていく。
 の虚脱した姿を気にしながら、くのいちがおずおずと手を挙げた。


くのいち「皆に言わなきゃいけない事があるんだけどぉ……。その、あたしが官兵衛の旦那の相棒っす。共有者のもう一人」


 驚きの視線がくのいちに集まる。だが、睨みつけるような、強い視線を向ける者が二人いた。


左近「なるほど、そう来ましたか。官兵衛さんが居なくなって、格好の隠れ蓑を見つけたってわけだ」

元就「残念だけど、くのいち。我々を騙そうとしてもうまく行かないよ。私の占いでは君は黒と出たんだ。本物の共有者は……」

左近「俺ですよ。まんまと墓穴を掘ったな、あんた」

くのいち「はぁ? 冗談はよしてくださいよ、左近の旦那ぁ」

三成「そうだ。墓穴を掘るのはお前ではないのか、左近? 俺の占いでは、貴様こそ人狼だと出たのだがな?」

左近「はっ、殿が敵とはやりにくい。が、人外だって言うなら手加減はしませんよ?」

元就「これではっきりしたようだね。三成とくのいちが人狼という事さ」

くのいち「その言葉、そっくりそのまま返しますぜぃ」


 二人の占い師による共有者たちへの黒判定。元就と左近、三成とくのいちの二組に分かれ互いに睨みあう。


清正「これじゃあ、埒が明かないな」

半兵衛「そうだね。ま、とりあえず俺の霊視の結果を聞いてよ。ァ千代さんは黒だったよ。人狼だった。まずは一人ってとこかな」

正則「おっ、やったじゃねぇか! お前の結果も黒だったのか、甲斐姫?」

甲斐姫「あたしは……その……」


 甲斐姫は言いにくそうに口ごもると、視線を虚空に泳がせた。
 その躊躇いがなんであるか気づいた面々は、甲斐姫の霊視の結果に気づく。


甲斐姫「ごめんなさいっ! ァ千代は人狼じゃなかった! 私の霊視では、白だったの!」

正則「お、おい、それってまさか……」

甲斐姫「私たちの……せいよね? 私たちが疑ったりしたから、だからァ千代を……」

半兵衛「どうかな。それって君が本物だったらって前提だよね? 俺の霊視ではァ千代さんは人狼だったんだ。そんな事言ってこの場を混乱させようとしているようにしか、俺には思えないよ」

甲斐姫「なんでそうなるのよ。あたしが昨日、ァ千代を疑ってたのは聞いてたでしょ? あんたの言い分じゃ、人狼同士が仲たがいしてる事になるじゃない!」

半兵衛「そういう振りはできるんじゃない? まさか言い争っている二人が、実は味方だなんて思わない……そういう心理を突いたと考える事だって出来る。それに、俺たちの敵は人狼だけじゃない。妖狐や狂人も混じってるんだ。ァ千代を疑ったから、君が潔白なんて証拠にはならないよ。俺は君が人狼なのか、妖狐か狂人か、知らないからね」


 甲斐姫は悔しそうに臍を噛んだ。
 涙が目尻に浮かんでいる。
 が、それが後悔から来る本物の涙か、皆を騙そうとしているのか、誰も正しく判断する事は出来なかった。


正則「お、おい、どうすんだ清正ぁ。俺、何がなんだか、わけがわかんなくなってきちまったよぉ」

清正「二人の占い師、二人の霊能者、二人の共有者、か」

幸村「これは……偽者が一人ずつ紛れ込んでいるという事は、すべて人狼か、あるいは妖狐や狂人が騙っているのか……」

半兵衛「俺の霊視じゃ、ァ千代さんは人狼だよ。だから、妖狐か狂人が紛れ込んでいるって事になるね」

正則「おい、妖狐って処刑か呪殺じゃなきゃ殺せねぇんだろ? 紛れ込んでたら、マジヤベぇよ。占い師と霊能者も占った方がいいんじゃねぇか?」

清正「待て。半兵衛はすでに暫定白だ。それに占い師をお互いに占わせても意味ないだろ」

正則「あ、そうか。いや……でも、元就が半兵衛に白出したって事は、元就が人狼だったら半兵衛も仲間なんじゃねぇか?」

半兵衛「ちょっ、待ってよ。元就公が白判定を出したら俺も人狼って、乱暴な推理じゃない? 俺にはまだ三成と元就公、どちらが正しいか分からないけど、勝手に人外の仲間にされるのは困るね」

三成「そうだ。偽者だからといって、白判定が出せないわけではない。暫定白を即人外と結びつけるなら、正則自身も疑われてしまう事になるぞ?」

正則「んなっ!?」

甲斐姫「それに昨日もその話はしたじゃない。暫定白を人狼だと数えると、数が合わない。私の霊視じゃ人狼はまだ三人残ってるから、暫定白を疑うなら偽者の中に狂人か妖狐が紛れ込んでいる事になるわ」

清正「つまり、偽占い師も人間に対して白判定を出しているという事だ。自分に白を出したからと言って、そいつが人狼でない証明にはならない」

正則「え、ええと、そうなると……」


 正則はぐるりとあたりを見渡すように、生存者たちの顔を順に見やった。
 三成とくのいち、元就と左近。この占い師と共有者は、すでに組み分けされている。そして、半兵衛と甲斐姫の二人の霊能者。まだ占い師達の組み分けには含まれないが、このうちの片方は偽者だ。
 そして、、清正、正則の三人。それぞれに二人の占い師から暫定白を得た者達だが、人外が紛れ込んでいるかは不明である。偽占い師が嘘の白判定を下した可能性もあるし、正しい白判定を出した可能性もある。
 最後に幸村。この中で役職もなく、占われていないまったくの灰色。


三成「霊視結果を見ても、人狼はまだ二人以上残っている。甲斐姫が本物なら人狼は三匹、半兵衛が本物でも人狼は二匹だ。その上、俺達には妖狐や狂人が生きているのか死んでいるのか、分からない」

正則「え、っと、それけっこうヤバくねーか?」

三成「今更気が付くな、馬鹿」


 三成は呆れながらも、場の状況を整理すべく規律の紙の裏に現状の内訳を記した。
 十人の生存者。
 最悪の場合を考えるならば、内訳は占い師一人、霊能者一人、村人三人、人狼三人、狂人一人、妖狐一人となる。
 人間と人狼は六対三だが、狂人が生き残っていれば実質五対四。もし今日の処刑者を誤れば、一気に人狼に場を制されるだろう。
 当然、妖狐や狂人がすでに死んでいる可能性もある――――が、占い師、霊能者、共有者と三人も偽者がいる以上、その中に妖狐や狂人が紛れ込んでいる可能性は高かった。半兵衛を真の霊能者とするならばそれは確実であり、少なくともどちらかは生き残り役職を騙っている事になるのだ。
 そして、甲斐姫を真の霊能者とするならば、人狼三人が全員役職を騙っているか、妖狐か狂人が紛れ込んでいる事になる。
 どちらにしろ、人間の敵が三人以上残っているのは確かだった。


幸村「今日の投票は、いつも以上に慎重にいかなければなりませんね」

半兵衛「そうだね。と言っても、投票先はもうどっちかしかないかな」


 そう呟き、半兵衛は視線をくのいちと左近の二人の共有者に向けた。
 二人のどちらかは人狼だ。二人の占い師がそれぞれに黒判定を出したため、それはゆるぎない事実である。狂人や妖狐が紛れ込んでいる事はない。そして、人狼を庇った占い師も共に、偽者だと暴かれる事になる。
 それはつまり、二日目から続く二人の占い師の真偽を定めると言う事に他ならなかった。


三成「俺は左近に投票する。俺視点では左近は人狼。元就は偽占い師だ」

元就「私もくのいちに投票するよ。私からすれば、彼女が人狼で三成が偽者だからね」

左近「ま、占い師達は当然でしょうね。で、俺もくのいちに投票する。くのいちは俺に、か」

くのいち「当然」

三成「これで二対二だ」


 問題は残りの者達がどちらに投票するかだった。
 六人の生存者。半兵衛、甲斐姫、、清正、正則、幸村――――それぞれが逡巡の末に投票の意思を告げた。


甲斐姫「あたしは左近さんに入れるわ。くのいちが本物の確証なんてないけど……友達のこと、信じたいから」

半兵衛「俺はくのいちかな。元就公を信じてるってわけじゃなくて、あくまでくのいちへの印象ね。今まで積極的に議論に加わって来なかったし」

清正「俺も同意見だ。口数が少ないのは、疑われないように警戒していたと考えられる」


 これで四対三である。
 残りの投票者は三人。、正則、幸村の投票が遊戯の行く末を左右する。

半兵衛「はどっちを信じるの?」


 名を呼ばれ、今まで官兵衛の死に打ちひしがれていたが、ゆっくりと顔を上げた。
 左近、くのいち、三成、元就――――四人の顔をじっと見つめ、はその名を口にした。


「私は……」


選択肢
さて、残酷な遊戯もそろそろ終りが近づいてきたようです。
この場でのの選択が物語りの結末を大きく変えます。
が人間なのか、人外なのか、何が彼女にとっての勝利なのか――――それを考え、どうぞ投票者をお選び下さい。
1.くのいちに投票する
2.左近に投票する






































1.くのいちに投票する

「私は……くのいちに投票します」

半兵衛「決まったみたいだね」


→くのいち
半兵衛→くのいち
三成→左近
清正→くのいち
正則→くのいち
左近→くのいち
元就→くのいち
幸村→左近
くのいち→左近
甲斐姫→左近


くのいち「……幸村様、甲斐ちん。信じてくれて、ありがとう」

幸村「くのいち……」

甲斐姫「こんなの……おかしいわよ! どうしてあんたを殺さなきゃいけないの!? どうして、どうして、こんな……!」


 泣き崩れる甲斐姫を慰めるように、くのいちはその身体をそっと抱きしめた。小さく、ありがと、ともう一度呟き、静かに腕を解く。
 そして、くのいちは五日目の処刑者となったのだった。


五日目・昼 終了
<生存者>
半兵衛(霊能者? 暫定白)、(暫定白)、三成(占い師?)、清正(暫定白)、正則(暫定白)、左近(共有者?)、元就(占い師?)、幸村、甲斐姫(霊能者?)
<犠牲者>
秀吉、信長、宗茂、官兵衛
<処刑者>
ねね、濃姫、ァ千代、くのいち

end


三成・くのいちを信じるか、元就・左近を信じるか。
これが運命の分かれ目です。
くのいちを選んだ皆様は、どうぞ七日目へお進みください。
七日目へ進む⇒








































2.左近に投票する

「私は……左近に投票します」

半兵衛「決まったみたいだね」


→左近
半兵衛→くのいち
三成→左近
清正→くのいち
正則→左近
左近→くのいち
元就→くのいち
幸村→左近
くのいち→左近
甲斐姫→左近


左近「やれやれ。綺麗な顔してやってくれるじゃないですか」


 左近は苦笑のような困ったような笑みを浮かべながら、三成を見ていた。三成は顔を背けたまま、左近を見ようとしない。


三成「……。先に裏切ったのは、お前だ」

左近「殿にとってはそうなんでしょうね。ま、俺はここで脱落しますが、人間の勝利を信じてますよ」


 そして、左近は処刑室へと向かい、荒縄の輪に己の首をかけた。
 ぎしり、ぎしりと音をきしませ、やがてその音は静寂の中へ消えていった――――


五日目・昼 終了
<生存者>
半兵衛(霊能者? 暫定白)、(暫定白)、三成(占い師?)、清正(暫定白)、正則(暫定白)、元就(占い師?)、幸村、くのいち(共有者?)、甲斐姫(霊能者?)
<犠牲者>
秀吉、信長、宗茂、官兵衛
<処刑者>
ねね、濃姫、ァ千代、左近





end


三成・くのいちを信じるか、元就・左近を信じるか。
これが運命の分かれ目です。
すべてのエンディングまで後もう少し。
左近を選んだ皆様は、六日目の訪れをお待ち下さい。