安定の黒イタ様のターンです。
シリアス、狂愛、BL表現あり、R15。
イメージを損なう恐れがありますので、問題ない方のみお進みください。
愛しい、愛しい09
もともと性に奔放だった自分にとって、それは大した衝撃ではなかった。
そもそも彼の祖父ローマがこの地を広く収めていた時は、今よりもっと享楽的で退廃的な風俗文化が蔓延していたらしい。であれば、貞操観念や禁欲といったものは、所詮後から植え付けられたものに過ぎないのだ。
ともかくも、イタリアの視線は薄く開かれた扉の向こうで、ベッドの上で繋がる一組の男女に注がれている。
男の方はよく見知っていたが、女の方は話にか聞いたことがなかった。東洋の小国の、そこの港街だ。
水の都と呼ばれるヴェネツィアには全盛期ほどではないが、地中海の重要な貿易拠点として様々な情報が船乗りたちと共に流れ込んでくる。ジパングと呼ばれる黄金の国の事も当然耳に入っていた。
興味を持ちつつ会いに行く事が出来ないうちに、その国は貝のように国を閉じてしまった。あのスペインが振られたらしい、と聞いて面白そうだと思ったものの、そのためだけに足を運ぶ気はなかったし、そもそもその頃は自由に身動きできる身体を当のイタリアが持っていなかった。
それから月日が流れ、かの国の名前がヨーロッパに届いた頃、偶然とある晩餐会で彼女の姿を目にした。
ミルク色の肌に、黒絹の髪。夜空を吸い込んだ瞳はとても魅力的だったが、彼がもっとも気に入ったのはあの声だ。セレナーデを奏でるナイチンゲールのような声にうっとりした。
小鳥のお喋り程度にしかその日は話すことが出来ず、イタリアの興味は空想の中でただ広がる。
他にはどんな風に鳴くのだろう。ラプソディを歌わせたらどれほど情熱的に歌ってくれるだろう。あの声をもっと聞きたい。あの声に自分の声を重ねたい。
もとより我慢が苦手なイタリアが行動に移すのは早かった。彼女が誰に用があってヨーロッパへ来たのか調べあげ、滞在先の主の元へアポイントメントも無しに訪れた。もう一度お喋りが出来たらいい、そんな気軽な気持ちだったが、イタリアの来訪を知った家人の応対はずいぶんとぎこちないものだった。
「今日は貴方とのお約束はないはずですが……?」
「ええ? 俺はあいつに呼ばれてここに来たんだよ? ずいぶんと熱烈な手紙を受け取ったけど」
「今日はその……日が悪く……」
「主人の意向も確かめないで勝手に追い返すの? 自分で言うのもあれだけど、俺けっこう気に入られてると思うんだよね」
執事風の男は戸惑いながらもイタリアを中へ通した。いつも通される主の部屋でなく、そこから遠い応接間へ通された事にイタリアの疑惑は確信に変わった。追い返したいのならさっさと主人に確かめにいけばいい、それもせず追い返しも出来ずに中へ入れるということは、わかりやすく”取り込み中”と言う事だ。
素直に待つことなどしない。適当に理由をつけて忍び込み、寝室の扉に耳をそばだてると生々しい情事の音が漏れ聞こえてきたのだ。
甘ったるい嬌声にイタリアは下半身のうずきを覚えた。背徳心や罪悪感などさっさと投げ捨てて、そっと下履きの中に己の手を潜り込ませ熱を持ったそれをゆるゆると抜き始める。すぐにもっと刺激が欲しくなり、イタリアは扉を少しだけ開いて中を覗き込んだ。
カーテンも閉めず陽光に晒された白い身体が、ベッドの上で踊っている。
ああ、あいつ騎乗位好きだもんね、などと思いながら男の姿が見えないのは好都合だった。
耳と目と指先だけに感覚を集中させて、イタリアは快楽に酔いしれた。
ああ……可愛い、可愛い、可愛い、可愛い……
声にしてしまいそうなほどに、彼女への賛辞を繰り返す。
あの声を挙げさせているのは自分だ。あそこに寝そべっているのは自分だ。この右手は彼女の手、指先が敏感なところを撫で上げて絶頂を促そうとしている。鮮明な空想は容易くイタリアの欲望を支配し、彼は夢中になって自慰に耽った。
行為の後、彼は何食わぬ顔で応接間に戻り、何食わぬ顔で主人に会った。には会わなかったがそれで構わなかった。今は会うべき時じゃないと思ったのだ。
イタリアは突然の訪問に驚く主人に極上の笑顔を向けて、恋文でも朗読するように情熱に誘った。先ほどまであの白い腕が絡みついていた首に自分の腕を回し、あの桜色の唇が重ねられた唇を味わうようにじっくりと食んだ。舌先を絡ませて、男の膨れた熱に指先を絡ませ、あの娘が呑み込んだそれを丹念に口の中で愛撫する。
「今日はずいぶん……積極的なんだな……っ」
男が息を弾ませる。男の体臭からですら、彼女の残り香な残っているようで妙に興奮した。
そんな事を幾度か繰り返してから、満を持してイタリアはに会いに行った。
「また会えて嬉しいよ」
躊躇いもなく嘘をつく。さすがに、君があいつとセックスするのいつも見てたよなどと言えるはずはない。
今日はおそらく挨拶程度、個人的な知己になれればいい。徐々に会う回数を重ねれば、自然と彼女と一晩を共にする相柄になるはずだ。今ほど自分が国であった事を感謝したことはない。これほど堂々と、国政や外交や条約を盾に、肉体関係を迫れるだなんて。
ともかくも、上手くやらなくては。
国力で大国に勝てるはずがないのだから、別の方法での心に近づかなければ駄目だ。外交的な距離ではなく、個人の心の距離を縮めなければ。
誰に抱かれても、世界がどんな情勢に陥っても、自分が彼女の一番大切な場所に居座っていられるなら、
「これからどうぞよろしくね」
これほど嬉しくて愉快で、楽しいことはない。
ねえ。あいつはさ、君を抱いた腕で俺のことも女の子みたいに抱くんだよ? 可笑しいよね。可愛い、愛してる、好きだって抱きしめながら言うんだよ? 笑っちゃうよね。
俺が君の男を全部奪っちゃおうか? そしたら、君の男は、俺だけ。
end
国の化身たちは意外とバイが多いんじゃないだろうかとか、
実は性別は自由自在に変えられるんじゃないかとか。
でも、仮に性別変えられてもイタ様は男のまま抱かれるのを楽しんでそうなイメージ…