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!CAUTION!
半兵衛と官兵衛が仲良くない&ヒロインに優しくない。
ヒロインが複数の男性と関係しています。
それでも許せる方のみお進みください。







































共犯者03





 そうしてと半兵衛の歪んだ関係はしばらく続いた。戦が難航して長引けば長引くほど、二人の逢瀬は度重なり、身体を繋ぎ合わせることも多くなった。
 だが、それは恋や愛といった甘い感情によるものではなく、もっと殺伐とした関係。共犯者といった方が近い。
 半兵衛はがいまだ他の男に抱かれるのを承知で繋ぎとめ、もまた特別それを改めようともしなかった。
 抱きたければ抱けばいい、そんな風に投げ出された身体を、半兵衛はいつか屈服させてやろうと試すような心地で抱いていた。
って可愛くないよね」
 明け方が来る前に帰ろうとするの背中に、そんな言葉を投げかけた。
「抱かれるだけの身体にそんなものが必要なのですか」
 と、醒めた瞳に醒めた言葉。
 ああ、だから可愛くない。
「そーいうのが可愛くないの。抱いてる時は必死にしがみついてきて、可愛いのになぁ」
 夜具から何も身に着けない上半身を起こして、揶揄するように呟けば、は特段気にした風もなく、そうですかと冷たく答えた。
「ね、嘘でもいいから『半兵衛様、大好きです』とか言ってみてよ。『半兵衛様と離れたくありません』とか『ずっとお慕いしております』とか」
「半兵衛様、大好きです。半兵衛様と離れたくありません。ずっとお慕いしております」
「もー、ぜんっぜん駄目! もっと感情込めてよ」
 はいやり直し! と再挑戦を求める半兵衛に、は心底面倒くさそうな顔を向けた。
「嘘でもいいと仰ったではありませんか」
「嘘にもそれなりの真実味ってのが必要なの」
 馬鹿馬鹿しい、と呟いてはそれを一蹴した。そもそも搾取されるのは女の身である自分のほうだ。それをそこまで付き合ってやる義理などない。
 半兵衛は寝具にごろりと寝転がって、盛大にため息をついた。
「あーあ、って他の男に抱かれる時もそうなの?」
 は意外そうな顔を見せた。
「気になりますか?」
「べつにー。俺はが誰とまぐわろうと関係ないし。がこれまでどおり俺と遊んでくれるなら文句は言わないよ」
 だけどね、と顔に冷笑を浮かべて半兵衛。
「もっと可愛い顔した方が、有力な情報が聞きだせるんじゃない?」
 は驚いたように瞳を揺らした。が、やがて、ふっと顔に淡い笑みを浮かべた。
 今更、驚くほどのことでもない。知らぬ顔の半兵衛が、の思惑など見抜けぬはずがないのだ。
「べつに……情報だけが目的ではありません。初めはただ襲われただけです。どうせいつもの事だから……好きにさせていたら、あの人たちが勝手にべらべらと情報を話し始めたのです」
 大方、自分のことを情婦にでもしたつもりでいたのだろう。男は独占欲が強いから、まさかが複数の男と関係し、それらの情報を集約している事など想像もしないのだ。
 愚かな、とは呟く。
「それでもその情報が官兵衛様のためになるなら、聞いておいて損はない。そんな所です。それに……そうして繋いでおけば、官兵衛様を裏切らないでしょう?」
 そう言った顔があまりにも純粋で……、半兵衛はふうん、と詰まらなそうに呻った。
 こんな風に女の尊厳を踏みにじられても、の中心はいつも官兵衛だ。どんなに身体が汚れようとも、官兵衛のためになるならそれすらも厭いはしない。
 ともすれば行き過ぎともいえる真っ直ぐな敬愛の念。それがを支えている。
 逆に言えば――――そこを落としてしまえば、は容易く崩れ落ちる。一瞬、それをずたずたに切り裂いてやりたい衝動に駆られ、半兵衛は寸でのところでそれを押し留めた。
「じゃあ、俺と遊んでくれるのも、俺が官兵衛殿を裏切らないようにするため? 心外だなぁ。俺、損得なんてなくっても、官兵衛殿を裏切ったりしないよ」
「ええ、そうでしょうね」
 でも、とは呟くと、半兵衛の前に膝を付いた。碧の美しい双眸に半兵衛の顔が映りこむ。
「女は嫉妬深く、男は独占欲が強いから――――
 唇を半兵衛の耳にそっと寄せて。
「まだ、遊んでいたいでしょう?」
 にこりと笑んで、唇を重ね合わせた。
 初めてから与えられた口付けに半兵衛は呆然とする。は嫣然と微笑むと、立つ鳥跡を濁さずとばかりに、さっさと褥から立ち去った。
 取り残された半兵衛は驚きに目を丸くし――――そして声を上げて笑う。
 俺を誑かそうなんて、まったく可愛い事をしてくれる――――
 そんな小細工をしなければならないほど、自分はにとって脅威として映っているのかと思うと、可笑しくて嬉しくて仕方がなかった。
「ああ、まったく……可愛いなぁ。そんな事言われたら、ちょっかい出したくなっちゃうよね」
 半兵衛はくすくすと独り笑みを零した。



end



「共犯者」第三話。
誤解ないように言い訳すると、
ヒロインは別に好きで複数の男性と付き合ってるわけではないです。
関係を持たないと言う事を聞かない輩や、無理やり襲われて、
それがいつの間にか身についてしまった……という結構悲惨な感じです。
なので、一見ドライに振舞っているけど、
心の奥底ではめちゃくちゃ男を憎んでいる――――くらいの殺伐さがあります。
夢ヒロインにあるまじき暗い設定ですね。。