半兵衛と官兵衛が仲良くない&ヒロインに優しくない。
ヒロインが複数の男性と関係しています。
半兵衛が若干S属性。
直接的表現はないですが、性的描写あり。
それでも許せる方のみお進みください。
唇を寄せて、どちらともなく舌先を絡ませあった。
互いの熱い吐息を頬に感じながら、白い肌が指先を誘う。
身体の線に沿って撫で上げると、絹を敷いたような滑らかな背が弓なりにしなった。
その反応に気をよくしながら、より深く、より奥へと繋がりを求めて、半兵衛はの身体へ堕ちていった――――
共犯者02
煌々と月明かりが差し込む森の中。
まるで操り人形の糸を引かれる様に、ふらりとは起き上がった。
足元がおぼつかないが、それを隠すようにきびきびした動きで地面に散らばった己の着物をかき集める。
「ゆっくり休んでいけばいいのに」
と、背後から妙に間延びした声が届く。くつろげた着物の前を正す事もせず、気だるそうな空気をまとった半兵衛が、木の幹を背に座っている。まるで情事の余韻を楽しむかのように、脱ぎ捨てた上着や防具はそのまま、両足を投げ出すようにして弛緩している。
「こういう事は終わったらさっさと帰った方がいいんです。夜明けまでいちゃいちゃする趣味はあいにくとございません」
の淡白な物言いに、半兵衛はぱちぱちと拍手を送った。
「わあ、淡白だねえ。潔くっていっそ惚れ惚れしちゃうよ」
何を馬鹿げた事を、とは胸中で毒づいた。
子供みたいな顔をしてこの男はとんだ食わせ者だ。
こんな所で抱かれるのだから、まともに扱ってもらえるなどとは思っていない。が、半兵衛の抱き方はいささか道をはずしている。
準備もそこそこに無理矢理身体を繋がれた。貫かれる痛みに顔をしかめると、その痛みを喜ぶようにさらに貫かれた。
『痛い方がいいよ。そうすれば余計な事を考えずに、俺だけに集中できるでしょ?』
何を言っているのか、はじめはわからなかった――――
『俺のことだけ考えて、俺のことだけ見て。の心を俺に頂戴? 俺に溺れて、そのまま窒息死してよ』
まるで呪いのように囁かれる言葉。
この人は私の身体だけでなく、心まで抱きたいのだと理解した。そうして屈服させて、組み敷いて、蹂躙して何もかも壊していく。
とんだ嗜虐主義者だ。
今までもっとひどい抱かれ方もしたけれど、心まで揺さぶられるのは初めてだった。
だから、この人の側に長くいてはいけない。子供が虫を解体するような無邪気な残忍さで、この人は私の甲殻を一つ一つ?いで行く。
「ねえ、どうしてこんな事、続けているの?」
髪をかきあげ、妙な色気を振りまきながら半兵衛が問う。
「ご存知なのでは? 戦場で女が生きていくには、色々と大変なのです」
ふうん、と半兵衛は抑揚のない声で相槌を打った。
「辛くないんだ?」
は言葉に詰まった。本気で聞いているのなら、なんて悪趣味な事をするのだろう。
は虚勢を張るように、べつに、とうそぶく。
「たかだか器官と器官が結合するだけ、本当に一つになるわけでもない。勝手にこすり付けて、勝手に果てて――――それで満足して帰ってくれるなら、特段ひどいとも思いません」
もう慣れました。
と、無表情で言ってのけた。
半兵衛はまたも、ふうん、と関心がなさそうな声を発する。
「そのわりには強がりが下手だね。抱かれてる時は、けっこう必死だったみたいだけど?」
自ら縋り付き、強請るように腰を摺り寄せ、甘えるように声を上げる。そのくせ抱かれる様はぎこちなく、遊女のようにすれてもいない。生娘にも近い素人の娘が、己の熱で欲に狂う姿は、意図せず男の支配欲を誘った。
先ほどの情事を思い出し、半兵衛はぺろりと唇を舐めた。
だが、の目はあくまで冷ややかで、あの熱はどこへ行ってしまったのかというほど醒めている。
「そうした方が殿方は喜ぶのでしょう? だからそうしているだけです」
「強がりが下手だね」
言いながらも、楽しそうに半兵衛は笑った。
ねえ、と秘め事を明かすように声を潜めて、を呼ぶ。
「明日も来てよ。俺、のこと気に入っちゃったみたい」
決して嬉しくない誘いに、はつと眉根をひそめた。
だが、が断るより早く、半兵衛は故の退路をふさぐ。
「官兵衛殿には知られたくないんでしょ? なら、俺の言うことを聞いた方が懸命じゃない?」
「私を脅すおつもりですか……? そんなことに、一体なんの意味があるのです」
「どう受け取ったっていいよ。でも困るのは、の方でしょ?」
無邪気な顔をしているくせに、時折この男は悪魔のようだ。絶対に相手が自分の思い通りに動くと確信していながら、最後の決定は本人に下させる。
「性悪軍師」
が毒づくと、半兵衛は破顔した。
「性悪軍師とは失礼な。黙って官兵衛殿に言いつけないんだから、これでも優しい方じゃない? それとも……」
半兵衛の唇が愉悦をたたえるようにぐにゃりと歪んだ。
「官兵衛殿とはもう寝たの?」
刹那、の手の平から、何本もの飛刀が飛来した。半兵衛の輪郭を木の幹にかたどるように、頬に触れるぎりぎりの所で突き刺さる。
「口が過ぎます、半兵衛様」
の碧の双眸が煌々と輝きを放っていた。
帰ります、と言い捨ててはすたすたとその場を後にした。怒ってはいたが、脅しは十分効いただろう。どんなに虚勢を張っても、官兵衛に知られることをは厭うはずだ。官兵衛が故の弱点である以上、は半兵衛に逆らうことはできない。明日も必ず、は訪れる。
半兵衛はの翡翠の瞳を思い出し、うっとりと目を閉じた。
半兵衛はあの輝きが好きだった。怜悧で冷静なが、感情をあらわにする時、瞳はひときわ美しく輝く。その輝きが、自分に向けられているだけで、ぞくりと背筋が喜びに震える。
嗚呼、あの瞳を自分だけに向けさせることができたら――――
半兵衛は一時の喜びに酔いしれた。
end
半兵衛との秘め事。
お互い心は赦し合ってないような、殺伐とした関係だといい!