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金銀妖瞳04





 吾だ。
 白猫の白眉である。
 前回は危うく、玉三郎や田吾作などと言う名にされる所だったが、吾のアイデンティティの崩壊を引き起こしかねなかったため、やはり白眉の名で通すことにする。
 さて、今回は少し変わった人物の話をしよう。
 その者たちの事を一言で表すなら「珍妙」であろうか。何が妙かと言うと、一人一人も十分変な奴らだが、なぜその三人が集まって共にいるのか分からぬ。共通項などおよそなさそうに見える凸凹なもの達が、何故かいつも共に姿を現すのだ。故に吾の目にはその凸凹加減が珍妙に映る。
 一言では説明が付かぬ。実際に見てもらうのが早かろう。
 そら、丁度おいでなすった所だ――――





「やあ、変わりないみたいだね」
 烏帽子をななめに被った穏やかな表情の男が襖の向こうから現れた。その後ろに、甲冑に身を包んだ男女が付き従う。
 ――――と、半兵衛の鼻先の傷跡に気付いたのか、どうしたんだい、と笑いながら元就が問う。
「猫ですよ。そこの馬鹿猫が言うことを聞かないもので」
 と、あごで白猫の方をしゃくって見せる。
「ほう? 人間の雌猫ならば関心もするが、雄猫と言うのが坊やらしいな」
 宗茂の揶揄するような言葉に、半兵衛は何を、と気色ばんだ。そんな険悪な二人の間に、元就がまあまあと割って入る。
「まあ、猫は気まぐれだからね……とは言え、理由もなく君がそんな事をすると思えないな」
 どうなんだい? と元就は猫に語りかける。猫からいらえはない。ただひげを揺らしてぱちぱちと目を瞬かせている。
「元就公、猫ですよ?」
 半兵衛の呆れるような声に、元就はそうなんだけどね、と恥ずかしそうに頭を掻いた。
「どうにも、その猫は普通の猫とは違うような気がして――――私達の会話が分かっているんじゃないかな?」





 どうだろうか。なかなか変わった奴であろう?
 如何にも、吾は人語を理解している。というより、猫が人語を解さないなどと思い込んでいるのは、人間の傲慢に過ぎない。ただ、他の猫たちはわざわざ人間の相手などしないから、人間の方も猫に言葉など通じぬと思い込むのだ。
 その点、吾は反応するだけでも優しい部類だ。
 故にまれに吾に言葉が通じているのでは、と訝る人間がいる。だが、それを真面目に考え、言葉を投げかけてくる人間は少ない。
 吾と真面目に会話をしようとするのは、吾の知る限りでは少なくとも主人とこの男くらいである。
 まあ、なんだ――――吾が言うのもあれだが、可憐な乙女である主人ならともかく、初老の男が真面目に猫に話しかけるという図は、なかなか奇妙である……のだが。





 まさかぁ、と半兵衛は噴出して、白猫の頭をぐりぐりと乱暴にさすった。
「こんな小さい頭の中にそんな脳みそ詰まってませんよ」
「そうかなぁ、なかなか賢そうに見えるんだが……」
「官兵衛殿が白眉なんて大層な名前をつけたからじゃないですか? 実際は鼠も捕まえられないような駄猫ですよ」
 ぐりぐりと撫でられるのが嫌なのか、半兵衛の手の下で白猫がフーッと毛を逆立てた。今にも噛み付こうとする白猫と笑顔で嫌がらせを続ける半兵衛を、がおろおろと交互に見やる。
 と、ふいに伸びた腕が半兵衛の手の下から、白猫を奪い取った。
 そして、
「うむ、今日もいい毛並みだな。立花が撫でてやろう」
 と、妙に上機嫌な顔のァ千代が、白猫をぎゅうっと両腕で抱きしめるた。





 ぐう……、この女の胸は固くて痛い。
 同じ女ならば、出来れば吾は主人の胸に抱かれたい。
 とはいえ――――さすがに女は切れぬ。吾はこれでもフェミニストなのだ。
 主人の客人であると言うならば、いましばらく女のおもちゃに甘んじよう。
 ……が、この固いのはどうにかならぬものか。



end


特にオチもないまま終わり。
ァちゃんは猫好きだと思う。宗茂は犬派っぽいな。
殿は堂々と猫に話しかけたりしてそうです。