最終的にヤンデレ落ちになります。狂愛風味です。
「共犯者」シリーズ以上にエグくなる予定(たぶん)ですので、
嫌悪感を感じられる方はブラウザバックをお勧めします。
バッチコーイ!な方のみお進みください。
甘露04
障子の向こうに人影が立ったかと思うと、失礼いたしますと断ってゆっくりとそれが開かれた。
髪の長い小柄な女。
半兵衛が肉厚な女は好まないと知ってか知らずか、官兵衛が送り込んできた女は細身の娘だった。
「本日、伽を務めさせていただきます」
どことなくに似ている。
肌は白く、ぬばたまの夜の瞳は熱に潤んでいて、上品なかんばせはどこか武家の姫なのだと紹介されても納得がいく美しさだった。
挨拶もそこそこに半兵衛は女を褥の上に組み伏せると、乱暴に腰帯を引いた。
露になる白い裸体を、行灯の光を頼りに見つめる。
娘は半兵衛の突然の行動に驚いたようだったが、すぐさま己が役割を思い出し、半兵衛の首に腕を回し縋りついた。
が――――
半兵衛はそれを振り払うと、女の上から身体を引き、褥の横に備え付けられた文机へと向った。女に背を向けた格好で、文机の上の書を開く。
「あ、あの……」
さすがにどうして良いかわからず、女がおずおずと声をかけると、半兵衛は振り返らないまま言った。
「ああ、もういいよ」
「え……」
娘は慌てて身体を起こすと、夜着の前を書き合わせて半兵衛の背を見つめる。
「あの……何か失礼を……」
「違うよ」
「では……」
「もういいって、言ってんじゃん」
娘は益々混乱した。こういった務めをしたのは初めてではないが、こんな風に拒絶された事はない。
どうして良いか分からず、黙って俯いていると、半兵衛が肩越しに振り返った。
「言ってる意味、わからない?」
心なしか苛立った口調。
「わたくしに……何か至らぬ点が……?」
「至らぬ点? 至らぬ点、ね」
半兵衛は膝を女の方に向けると、女の身体を値踏みするように見やった。
そして、つと顔を寄せると、
「はもっと雪みたいに真っ白な肌をしていた。触るとどこもかしこもすべらかだし、髪も艶やかで、花の香みたいな甘い匂いがする。組み敷いた時、震えていたよ。きっとこういうの、初めてなんだ」
違うんだよ、と半兵衛が呟くように告げる。
「君はじゃない」
娘の瞳が動揺するように大きく揺れた。
自分自身の問題ではなく、まさか他者と比べられて拒絶されようなどと、思っていなかったのだ。少なからず己の美貌に自信のあり、或いは半兵衛に淡い憧れめいたものを抱いていた娘は、顔を真っ赤にさせ今にも泣きそうな顔で、半兵衛の居室を飛び出して行った。
半兵衛はため息を一つ付くと、白い褥の上にごろりと寝転がった。
先ほどの娘には可哀想な事をした。
だが、半兵衛の欲しいのは一夜限りの見知らぬ娘ではなく、なのだ。
こうして愚かしくも、秀吉の屋敷に泊まれば再びが訪ねてくるのではないかと、淡い期待を寄せてしまった。もしかしたらが、また自分を訪ねてくれるのではと願って。
だから障子が開かれた時、そこにいるのがでない事に、半兵衛は大いに落胆していたのだ。
もう一度、触れたい――――
伸ばされた指先は空しく虚空を掴む。
いつしか半兵衛は、の夢ばかりを見るようになっていた。
end
ほしい物はただ一つ。