この話にはキャラのイメージを損なう表現が多々あります。
変態とアホの病にかかった子がいます。
それでも許せる方のみお進みください。
とりかへばや奇談05
今度の番犬は前の犬よりも更に厄介だった。
正則以上に殴る手に躊躇がない。その上、前触れもなく手が出るので、一体何を以って三成が邪まと判断しているのか分からないのだ。
の身体に意味もなく触れるな。肘から上は見るな。木に登るな。変な所で寝るな。姿勢を崩すな。胡坐をかくな――――と。邪まと言うより、少しでもの印象を崩すようなだらしがない行動を取ると、問答無用で後頭部をあの鉄扇でスパンと叩くのだった。
これでは邪まな気を起こそうにも起こせない。というか、その前に果ててしまう。
身の危険を感じた半兵衛は早々に一計を案じる事にしたのだが――――
「話にならんな」
はんっ、と鼻で嘲笑うように笑って、三成は半兵衛が精一杯寄せた胸元を冷ややかな目で見下ろした。
「そんな貧しい胸でこの俺が惑うか」
と、が聞いたら激昂しそうな事を宣いながら、半兵衛の色仕掛けをいとも簡単に破ってしまったのだった。さすがに正則ほど馬鹿じゃないか、と思いつつ、貧しいと決め付けられたに同情を禁じえない。こいつこそ誅されるべきじゃないのかと思いながら、飴が無理なら鞭でどうだとばかりに、半兵衛は次の策を講じる。
「じゃ、これでどう?」
半兵衛は徐に懐に手を突っ込むと――――この行為が邪まで無いかと問われると微妙ではあるのだが――――人差し指と中指の間に一枚の写真を挟んで、ぴらりと見せ付けた。
何だそれは、と三成は眉間に皺を寄せて半兵衛の行動を見ていたが、写真に写された人影を確認し色をなくす。
「く、それは……」
「ふふーん。邪まなのは、どっちかなぁ?」
写真は三成の忠臣、左近の背中を写していた。両手には三成自慢の高性能一眼レフ。肩膝をつき物陰に隠れるようにして、一心に何かに向ってシャッターをきる姿である。
それだけならば、左近が何をしているのかは判然としないだろうが、付近の風景を鑑みればある程度の予測は立つ。この垣根の向こうは――――浴場だ。
「前を気にするばかり、背中ががら空きだったね。今度からは背後にも気をつけるように言った方がいいよ?」
勿論、三成がそれまで生きていられたらだけど――――
にこりと、天女のような微笑を浮かべながら、さらりと死の宣告を下す半兵衛。
三成は悔しそうに唇をかみ締めた。
「……俺が盗撮を指示したと、どうして証明できる」
「往生際が悪いなぁ。これ三成の一眼レフだし……、左近に変装させてるみたいだけど、頬の傷見えてるから」
布で口元を覆っているが、その隙間から刀傷が覗いているのだ。
「そもそも三成以外に、左近にこんな馬鹿な事させられる人いないでしょ。ま、どうしてもって言うなら、左近を吐かせてもいいんだけどね」
再び天女のような笑顔を浮かべつつ、半兵衛はすちゃっと両手に飛刀を構えた。義に厚い左近なら主人を売るような真似はしないかもしれないが、その時は同罪だ。早々ににこの写真を流して、不埒者は揃って成敗してやろう。
半兵衛は優越感たっぷりの笑みを浮かべて、三成に詰め寄った。
「どうする? ここで俺を見逃すか、のお仕置きを喰らうか……」
ねえ? と、まるで悪魔の囁きのように、半兵衛は三成の耳元で囁いた。の顔をしているからこそ、尚更タチが悪い。妖艶な微笑が、益々三成の心を揺らす。
だが、三成は屈しなかった。
「違う! これは……おねね様を撮っていたのだ!」
と、苦し紛れに付いた嘘に、半兵衛がやれやれと肩をすくめた瞬間――――
「この変態馬鹿が!」
どこからともなく飛んできた片手鎌が、三成の頭部を強打し、卒倒させた。
ばたりと地に伏した三成は、脳天から血をぴゅーぴゅー流しつつ、だが己が誇りを守った事にどこか満足そうな顔で気を失っていた。
背後を振り返ると、そこには片手鎌を手にした清正が仁王の如き迫力を纏い佇んでいた。
厄介な奴が出てきたと、半兵衛は小さく舌打した。
end
三成が変態さんいらっしゃいでごめんなさい。
護衛役、清正にチェンジです。