このシリーズには、狂愛、ヤンデレ、鬼畜、外道、暴力といった要素が含まれます。
また、半兵衛と官兵衛が仲良くない&ヒロインが複数の男性と関係を持っています。
嫌悪感を感じられる方はブラウザバックをお勧めします。
大丈夫な方のみお進みください。
翡翠城攻略の作戦は恐ろしいほど迅速に進められた。
半兵衛が何と信長や秀吉を誑かしたかは知らない。ただ、半兵衛は上機嫌での元を訪れ、出陣の挨拶をしていった。
帰って来たら祝言でも挙げようか、と。
どこまで本気かどうか分からぬ口ぶりで告げると、の首筋を強く吸って紅い痕を残した。
自分の物である事を誇示するような所有の証。
それが消えるまでには帰って来るからね、と微笑みながら出て行った。
はそんな半兵衛の背中を――――ひどく冷めた目で見送った。
悪之華 03
廊下を踏み鳴らす足音に、は顔を上げた。
この音から察するに大分機嫌が悪いらしい。
障子の向こうから声をかけられ、いらえを返すと、不機嫌な表情の官兵衛が姿を現した。余人であればそれが常態であると思うだろうが、確かに機嫌を損ねている事をは気付いていた。
師の機嫌を損ねるような事をしただろうかとふと考え、あれしかあるまい、と思い当たる。半兵衛による翡翠城攻略の件だ。
「愚か者」
と、開口一番、官兵衛はを叱った。
「お前は何を考えている。何をしたのか分かっているのか」
静かだが激情を孕んだその言葉に、は場違いにも官兵衛の優しさを感じた。
はい、と目を伏せて答える。
「お前と恋仲になったと、半兵衛が浮かれて触れ回っていた。まさかそれがお前の代償か」
は答えなかった。
だが、暗い瞳のままゆっくりと頷く。
官兵衛の口元から深い嘆息が漏れた。
「愚かな事を……」
本気でそう思っているのだろう。城を獲る事より何よりも、あの半兵衛と誓いを立てた事に腹を立てている。
「お前は竹中半兵衛を甘く見ている。お前の浅はかな策など、すべて見透かされていよう」
もし半兵衛が城を落とし、の願いを叶えたら――――その代償に何を求められるか、は分かっていない。
あの男がどれほど冷酷で非道な軍師なのか、官兵衛は痛いほど知っている。あの子供のような純粋な微笑みの下に、どれほど唾棄すべき悪徳を抱えているか、余人は知らぬのだ。
だが、はかぶりを振ると、問題ございません、と答えた。
「半兵衛様がお戻りになる事はないからです」
官兵衛はぴくりと片眉を上げた。
「は私の育った家。幾人かの家臣は私の常世姫としての力を、の名よりも重視しています。織田の家臣となった私と今もつながり、の動向を知らせてくれるのはそのためです」
その事は官兵衛も知っていた。
内通者がいるからこそ、この戦は容易いと秀吉も容認したのである。
半兵衛の率いる先陣が城を攻めた時、内より呼応して真っ先に天守を落とす手はずとなっていた。そうすれば戦は最も早く、犠牲を最小限に抑えた形で終わるだろう。
だが、事実は違った。
「内通者は裏切りません。呼応する振りをして、半兵衛様の軍を後ろから急襲するのです」
「なんだと……?」
官兵衛はかすれた声で訝った。
が俯かせた顔を、ゆっくりと持ち上げる。
薄暗闇の中でも煌々と輝く碧の光が、の双眸に宿っている。
「お前は……」
夏でもあるまいに、官兵衛の背はじっとりと汗ばんでいた。
微かに花の香のするの居室に、まるで異世界のような重い空気が立ち込める。
「あの方は泰平のためになりません」
は碧の瞳に煌々と光を宿したまま呟いた。
「こともあろうに、秀吉様に信長様の暗殺を持ちかけたのです。承諾しない秀吉様を、サル顔の愚か者と罵って……」
の握り締めた拳に、力が加わるのを官兵衛は見た。
常日頃、信長など死んでしまえと言っていたが、まさか本当に秀吉に話を持ちかけたとは、流石の官兵衛も予測しなかった。
秀吉とて愚か者ではない。
忠臣の振りを装って、いつでも己が天下人になる算段をしているはずだ。
だが、その秀吉にさえ躊躇わせるほど、半兵衛の策は悪逆だったのだろう。あの男の策は、まこと虫唾が走るほどにえげつないのだ。
したり顔で閨でそんな事を語った半兵衛を、はいつから弑するつもりだったのだろうか。
そもそも――――と関係を結んでいた男達は、皆この戦に出陣している。
殺すつもりなのか。否、殺させるつもりだったのか。一体、いつから仕組まれていた――――
官兵衛の顔色の悪い顔を、は闇夜でも眩しい美しい顔で見上げた。
ふふっと愛らしい声で笑って、
「悪之華なる物が存在するならば、きっと何よりも黒き禍つ華なのでしょうね」
官兵衛はただ、の美しい顔を見つめる。
くすくす、とは笑みを零しながら――――繰り返す。
「きっとそれは、闇より深い漆黒なのでしょう」
end
機会さえあれば成り代わってやろうという、野望満々の人です。
半兵衛の策を実行していれば、本能寺の変は秀吉が起こしたかも……
そういう人です。
が、あまりにえげつなかった(秀吉の名を地に貶める)ものだったので、
実行には至らなかったと。
性悪軍師どころか悪徳軍師ですね、半兵衛先生!
ところで、この戦が終わったら結婚しようって、それ物凄い死亡フラグ……