両片想い
よく考えてみてよ。
俺、こんな成りしてるけど、けっこういい年なんだよね。官兵衛殿より二歳年上だしさ。
のことは可愛いと思うよ?
でも、そんな風には思えないな。
だってさ、俺といくつ離れてると思ってんの? 一歩間違えれば犯罪だよね、犯罪。
それに俺、まだおねね様に殺されたくないし。
あはは、本当だって。秀吉様もおねね様も、官兵衛殿だって、あの子には甘いんだから。
皆から……奪えないよ。大切に育てられた箱入り娘を、横から掻っ攫うなんて。
あ、違うよ? 出来てもしないって言ってんの。
俺の軍略に出来ないことなんてあるはずないじゃん。なんて。
それに……最近、あんまり身体の調子、良くないんだよね。
ははっ、そんな顔しないでよ。大丈夫だって。俺……まだまだやる事あるから。
まだいなくならないよ?
でもさ、一緒になっちゃったら……ね。怖くなって戦どころじゃなくなっちゃうかもしれない。
ああ……そう、同じかな。俺が戦でいい馬に乗らないのは、馬を気にして武功をあげ損ねるからだけど、もしもと一緒になったら、死ぬの、怖くなっちゃうかもしれないじゃん。
こんな乱世なのに、酷なこと、させないでよ。
え、泣いていた……? そっか……可哀想なことしちゃったな。
でも、俺はその涙をぬぐう資格はないから――――君に頼んでいい?
……じょーだんだよ。
だからそんな怖い顔しないで。俺だって、本当は――――さ。
よくお考えください。
私はすでに名も家も捨てた身。今はの名を名乗っておりますが、それも官兵衛様に与えられたもの。
後ろ盾となる家もございません。
そのような身分で、半兵衛様と釣り合うなど、とても――――
はい。秀吉様もおねね様もてとも良くして下さいます。
養女にならぬかと仰ってくださいました。とてもありがたいお申し出です。
でも――――やはり捨てられなかったのです。
私は十七代目、常世姫。如何に家を失い、名を捨てようとも、この碧の双眸はずっと私に付いて来る。
ふふっ、おかしいでしょう。家は私を捨てたのに、私はまだ――――あの人たちのことを捨てることができないのです。
未練がましいと……私も思います。
でも、私がの血を引いているのは紛れもない事実だから――――こんな血で半兵衛様の家系を穢すわけには参りません。
ええ、本心です……
もし女児が生まれたら、その子も千里眼を宿してしまうかもしれない。私と同じ運命を歩ませるのは酷でしょう?
ありがとう……
それでもいいと言ってくださるんですね。
でも、私は臆病で卑怯だから――――飛び込んでいく勇気も、手を伸ばす自信もない。
半兵衛様には……きっと可愛らしい姫君がお似合いです。
祝言はきっと盛大に執り行われるんでしょうね。
紋付袴の半兵衛様と、白無垢に身を包んだ姫君。
いいなぁ――――私も、そんな風になれたら……
大丈夫、私きっとちゃんと出来ますから。
ちゃんと二人を祝うことができるから――――
ごめんなさい、ちょっとだけ。泣かせて、ね?
end
お互い手を伸ばせない臆病者。