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 ここで信じられるのは唯一つの真実。
 自分だけが、自分の味方であるという、それだけが――――真実。




人狼の館 2nd night04





「どういうことかな、?」
 元就の好々爺然とした笑顔が崩れた。その下に謀将と名を馳せた歴戦の武士の顔が現れる。
「言葉通りの意味です。私の占いでは元就公が黒だと出ました。人狼だと」
「えっ? えっ? まで黒判定ってどーゆーこと?」
 取り残された両兵衛が顔をしかめる。
「一体なんのつもりだ、……?」
 庇われた形になる三成は、の真意を測りかね警戒するような視線を寄越す。は応えずただ三成の顔を見つめるばかりだ。
「何だ? 人の占い結果に被せるような真似をして」
「それは私の台詞だよ。三成がでしゃばるような真似をするから、変な疑いを生むような事になっちゃったじゃない。いくら同じ環境で育ったからって、まさかここまで思考が似るなんてね」
「昨日も今日も偶々同じ相手を占ったと? 二回連続で偶然だなどと言うつもりか」
「三成自身がさっき使った言葉だよ、それは。結果論にすぎない。偶然のように見えても、それが真実ならば信じるしかないでしょう」
 そんな事より――――
 はそう言葉を切ると、沈黙を続ける元就に顔を向けた。
 一時はを援護するような言動をした元就だったが、いまやそのの発言により首を絞められている状態だ。
 二人の占い師からの黒判定。どちらが偽者にしろ、限りなく人狼に近い存在だと告発されたようなものだ。
 元就は細めた目でと三成を交互に見やると、何かに気づいたように軽くかぶりを振った。
 そして視線を官兵衛と半兵衛の方に向け、これは困った事だよ、と前置きする。
「どうやら私は大きな思い違いをしていたようだね。三成が私を人狼だと認定した瞬間、私にとってが本物の占い師となった」
 偽者になり得るのは狂人、人狼、妖狐の三者。
 一方が偽者ならばその内訳は、本物と狂人、本物と人狼、本物と妖狐の三通りである。
 だが、元就はもう一度かぶりを振ると――――
「どちらも偽者だったなんて、これこそ悪い偶然さ。とは言え……これが真実なら、私たちは信じなければならない」
 君たちはどちらも偽者なんだね――――
 元就の問いかけに応える声はない。
 代わりに、が更に追い討ちの言葉をかける。
「この状況になって、言い逃れは通用しませんよ元就公。黒判定を出した占い師を偽者と疑い、今度はどちらも偽者にし立てあげようだなんて、流石に苦しい言い逃れだと思いませんか?」
「混乱を招くような事をして申し訳なかったよ。でも、結果論さ。狩人である私に二人とも黒判定を出した。これが意味するのは、二人とも偽者であり、本物の占い師は第一の晩にすでに死んでいたという事だよ」
「詭弁だ」
 三成がに加勢するように、二人の議論に割って入る。
 本来なら反目するはずの二人の占い師が同じ側に付くという奇妙な構図。だが、どちらが偽者だとしても、二人が元就を人狼と認めている事は事実だった。
「元就公。さすがに今の状況じゃ、俺たちだって信じられないよ」
 元就への疑念は外野に徹していた半兵衛にも飛び火し、みれば官兵衛も疑うように元就の表情をうかがっている。元就はやれやれと肩をすくめると、仕方がないね、と首を振った。
「まあ、私自身、無茶な事を言っているのは承知しているよ。まさか二重にひっかけられるなんて、思っていなかったからね。ともかく占い師の二人はもちろん、半兵衛と官兵衛も私を疑わしく思っているに違いない。その上で一つ、君達に提案したい」
「なんだ」
 沈黙を続けていた官兵衛が、元就の提案に言葉を返した。
「仮に私が人狼だとしよう。しかし知っての通り、この遊戯には妖狐も紛れ込んでいる。人狼を仕留めても、勝利は妖狐に掻っ攫われてしまうという事。わかるね?」
 一同がはっと息を飲み込んだ。
 半兵衛がなるほどね、と感心したように呟く。
「先に妖狐を始末しないと、人狼を始末できない、か。考えましたね、元就公」
「苦肉の策さ。今のこの状況では、私の声は君達に届かないだろう」
 だから――――
「私を処刑する前に、どうか妖狐を先に始末してくれないかな?」


end


少人数にも関わらず妖狐を入れたせいで、
厄介な展開になっております。
元就の語る苦肉の策に、あなたなら乗りますか? 乗りませんか?