決められた時間に目覚め、決められた順に席に座り、決められた役割の元で言葉を交わす。
この館の中では、外の世界で構築された関係など意味を持たない。
家族も、仲間も、愛すべき人も、皆偽の顔によって覆われている。
ここで信じられるのは唯一つの真実。
自分だけが、自分の味方であるという、それだけが――――真実。
人狼の館 2nd night
円卓を囲むようにして、七人が席についていた。
、半兵衛、官兵衛、三成、清正、左近、元就の七人である。
誰も口を開かない沈黙の中、はちらりと部屋の片隅に目をやった。
部屋の暗闇に溶け込むように赤黒いそれが横たわっている。脳天を裂かれ柘榴のような中身を露出させた死体が、飛び出した両眼で虚空を見つめている。どこからともなく飛んできた蝿が、黄色く濁り出した眼球に止まり、は慌てて目を反らして込み上げて来る吐き気に耐えた。
死体は正則だった。
今日、目覚めると正則は無残な姿で、部屋の片隅に転がっていたのだった。
狼に喰われた。その事をここにいる者達は何故か知っている。
この不気味な館が何を意味するのか、ここで自分たちが何をすべきなのか、熟知している。その知識がどこから訪れたものかも知らずに。
「くそっ、正則……」
清正の怒りと悲しみに満ちた声が沈黙の中に響く。
は痛ましいものを見るように清正の顔を見つめると、意を決して口を開いた。
「告白します。私は……占い師です」
一同の視線が集まる中、は自分の占いの結果を淡々と語った。
「官兵衛様を占いました。結果は白です。官兵衛様は人狼ではありません。もちろん、妖狐でもありませんでした。理由はこの中で一番、嘘が読みづらい方だと思ったからです」
一同の視線が官兵衛に集う。官兵衛は何も言わなかったが、の占い結果を肯定するように頷いて見せた。
「他に占い師を名乗る人はいるかな? いなければ、が本物って事で確定するけど」
半兵衛の提案にしばしの沈黙が流れる。このまま誰も現れなければ、提言通りが本物の占い師として確定するところだったが、誰も名乗り出ないのを見計らい三成が大仰そうに手を挙げた。
「様子見をするつもりだったが、他に名乗り出ないのならば偽者はのみという事だな。俺が本物の占い師だ。占い先は官兵衛。結果は白。占った理由はこの中で一番表情が読みにくいと思ったからだ」
突如現れた対抗者に、は驚きの表情を向ける。
「三成……なんで……? 自分が何をしているか分かっているの!?」
「黙れ……の顔で馴れ馴れしく話しかけるな、人外が」
「なっ!?」
の驚きの視線と、三成の冷ややかな視線が交差する。
二人の占い師の存在が意味する事は一つだ。
偽者が混じっているという事。偽者が占い師を騙り、人間たちを罠に落としいれようとしているのだ。
「俺がすぐに名乗り上げなかったのは、偽者を炙り出して、さっさと片付けるためだ。まさかお前が人外だとは予想外だが……こうなっては仕方あるまい」
お前は偽者だ、と三成は人差指を突きつけた。はそれを悲しげに見つめ、ふるふるとかぶりを振る。
「やめて……正則があんな事になったのに、三成まで……」
「その正則をあんな目に逢わせたのは貴様だろう。もっとも……俺は貴様が何者かは知らんがな。ただ俺が本物である以上、偽者が占い師を騙ったという事実があるだけだ」
じっと見つめあう二人の占い師。
やがて、は根負けしたように、分かりました、と呟いた。
二人の占い師が白判定を出した官兵衛に顔を向け、一つの提案をする。
「官兵衛様。占い師同士の議論に意味はありません。占い師が二人現れてしまった以上、私たちのどちらかは偽者です。ならば……どうか二人とも処断してください」
end
「人狼の館」第二ゲーム開幕です。
前作に続き再び三成の占い師宣言。
嘘か、本当か……
次回に続きます。