欲望と狂気と小さな祈りのゲームです――――
人狼の館15
連日の処刑と襲撃に一人ひとり減っていく仲間たち。
もはや無駄口を叩く元気も無くなったのか、起き出した面々は皆沈黙を守っていた。
だが、ふいにくのいちが違和感に気づく。
幸村が起き出してこないのだ。
くのいち「まさかっ、幸村様!?」
くのいちは慌てて幸村の自室へと飛び込んだ。
そこには見るも無残な姿で横たわる幸村の亡骸が残されていた。
くのいち「そんな……なんで……幸村様が……」
がくりとうな垂れたくのいちを気遣うようにが手を差し伸べた。
だが、くのいちは力いっぱいそれを振り払った。
くのいち「もう、いやだよ……誰も……誰も信じられない……」
ついに泣き出してしまったくのいちに、は何の言葉もかける事が出来なかった。
正則「昨日の犠牲者は幸村か……」
三成「それは違うな」
「え?」
元就「幸村は犠牲者じゃない。幸村の正体はね、」
三成「妖狐だったのだ」
くのいち「嘘……。まさか、幸村様が……?」
正則「お、おい、マジかよ? でも、あいつ普通に見えたぜ? とても人外には思えなかったし……」
元就「そういう振りをしていた、という事だね。二人の占い師が占ったんだ、事実だよ」
三成「ふん。貴様は話を合わせただけだろうがな」
元就「まあ、君にとっては私は偽者だからね……。でも、偽者の占い師なら、こんなに早く幸村が妖狐である事に気づくかな?」
三成「いない人間の数をかぞえて、当たりをつける事は出来ると思うが?」
元就「やれやれ。それは君自身も、占い師の振りが出来ると言っているようなものだよ」
「待って! じゃあ、人狼の犠牲者は他に……?」
は幸村の部屋に集まった一同の顔を見やり、足りない人物を見つけた。はっと息を飲み込み、慌ててその人物の自室へと飛び込む。
そこには暗んだ瞳で虚ろに虚空を見つめる半兵衛の躯が、投げ出されるように放置されていた。
甲斐姫「う、嘘……」
「あ、あぁ……いや……あ……」
正則「おい……おいおい。これって何なんだよ、どういう事なんだよ!?」
二人の死体に、妖狐の正体。そして霊能者の片割れである半兵衛の死に一同は混乱を極めた。
六日目の昼の訪れである――――
甲斐姫「だから、あたしじゃないって言ってるじゃない!」
中央の部屋に戻り、六日目の議論を始めた一同の話題は一つに集中していた。
二人の占い師が幸村を妖狐と断定した以上、その事実に揺らぎは無い。つまり、昨日の犠牲者は半兵衛となるのである。
そうなった以上、問題視されるのは甲斐姫の正体だった。
正則「ふざけてんのか、あぁ!? 半兵衛が喰われたんだぞ? ってことは、てめぇが人狼だって証明じゃねぇか!」
甲斐姫「違うわよ! あたしが本物の霊能者!」
三成「では、半兵衛はなんだ? 貴様が本物ならば、なぜ半兵衛は襲われた?」
甲斐姫「半兵衛は狂人よ! 人狼は狂人が半兵衛だって気づかなかった。だから、襲われたのよ!」
元就「人狼が味方であるはずの狂人を、か。少し説得力に欠けるね。そもそも人狼はなぜ他の者を襲わずに、わざわざ霊能者である半兵衛を襲ったんだろう? 暫定白という条件だけなら、や清正でも良かったはずだ」
甲斐姫「そんなの分からないわよ! たまたま人狼には、半兵衛が本物っぽく見えたのかもしれないじゃない」
三成「話にならんな。俺には貴様の方がよっぽど狂人に見える」
甲斐姫「なっ!?」
三成「霊能者の真偽は別問題として、半兵衛が襲われたという事は、半兵衛の霊視結果が人狼にとって都合が悪かったという事か? 貴様の言っているのはそういう事だ」
正則「半兵衛が死ぬ前の霊視って……ァ千代が黒だってやつか? それが本当だとすると……」
清正「ァ千代は人狼。甲斐姫はァ千代を庇った、人狼という事か」
一同の疑うような視線が甲斐姫に注がれる。
甲斐姫は咄嗟にかぶりを振った。
甲斐姫「違う! 人狼に騙されたりしないで!」
甲斐姫は大声で潔白を訴えたが、誰もそれを擁護するものはいなかった。
そして――――
→甲斐姫
三成→甲斐姫
清正→甲斐姫
正則→甲斐姫
元就→甲斐姫
くのいち→甲斐姫
甲斐姫→元就
甲斐姫「そんな……あんたも、なの? あんたもあたしを信じてくれないの?」
くのいち「……ごめん。あたしには、もう、何が正しいのか……わからないよ」
そして、甲斐姫は六日目の処刑者となった。
重苦しい死の気配を感じながら、が小さく呟く。
「これで……もう、こんな下らない遊戯は終わるんですね……」
正則「あ?」
「半兵衛様が本物だった。なら、ァ千代さんと甲斐姫は人狼だもの。左近も人狼だと信じて私たちは彼を処刑した……だから、明日にはこんな遊戯、終わっているはず」
三成「ああ。そこの偽占い師は狂人だった、という線を俺は疑っている。もし明日の昼で遊戯が終わらなければ、そこの偽占い師を吊るし上げれば済む話だ」
元就「おっと。悪いけど、私視点では遊戯はまだ終わっていないよ。三成とくのいち、二人が人狼と狂人だと信じている」
三成「まあ、明日になれば全部わかる。明日になれば……な」
そして一同は一縷の希望を胸に抱きつつ、明日を待つべく各々の部屋に戻るのだった。
六日目・昼 終了
<生存者>
(暫定白)、三成(占い師?)、清正(暫定白)、正則(暫定白)、元就(占い師?)、くのいち(共有者?)
<犠牲者>
秀吉、信長、宗茂、官兵衛、半兵衛
<処刑者>
ねね、濃姫、ァ千代、左近、甲斐姫
<呪殺>
幸村
end
六日目終了。
さあ、結末はいかに……?