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 これは残酷なゲームです。
 欲望と狂気と小さな祈りのゲームです――――




人狼の館13





「え……?」

清正「なんだ? まさか俺達を疑っているのか?」

正則「いや……そういうわけじゃ……ねぇけどよ」

半兵衛「待ちなよ。正則は二人のどちらかは偽占い師に庇われた、人狼だと思っているんじゃないの? でも、二人の占い師が別々の人物に白を出したんだよ? その事はどう説明するの」

甲斐姫「あっ、そうよね。もし偽占い師も人狼なら、どっちが人間か知ってるはずだもの。それで人狼じゃない方を襲っちゃえばいいんだし」

左近「そうですかね? そしたら、襲われなかった方を占った占い師が、偽者だと疑われませんかね?」

清正「待て。偽占い師が人狼を庇う事を前提に考えるな。偽占い師でも、人間に対して白判定は出せる」

「私も暫定白と人狼を結びつけるのは早計だと思う。もし偽占い師が人狼を庇っているなら、三成が偽者だったら私も正則も人狼になってしまう。でも、それじゃあ数が合わないよ。人狼は三人しかいないのに、じゃあ霊能者の偽者は狂人? それとも妖狐?」

くのいち「そだね。偽占い師の正体がばれたらお仲間も道連れだし、仲間全員に白判定なんて危ない事しないよね」

幸村「それに占い師のどちらかが狂人か妖狐という可能性もある。今、偽者の正体を考えても先は見えないだろう」

甲斐姫「そ、そうですね。じゃあ、幸村様の考えって何なんですか?」

幸村「なぜ、人間だと分かっている人物を放置し、宗茂殿を襲ったのか――――おそらく、それが人狼にとって必要な行為だったからでしょう。考えられる理由は二つ。宗茂殿が人狼にとって邪魔な存在であり、人間だと判断できたから。あるいは、宗茂殿が人狼にとってどうしても屠りたい相手であったから」


 そこで言葉を止めた幸村は、じっとァ千代の表情を伺った。その視線を受け、ァ千代の顔が険しく硬化していく。


ァ千代「つまり何だ、ハッキリ言え。立花は冗長な物言いは好まぬ」

幸村「では、遠慮なく申し上げましょう。私は宗茂殿が襲われたのは、彼がァ千代殿の獲物であったからと考えています」


 幸村のァ千代を疑う発言に、一同は騒然となった。動揺を見せる者、小首を傾げる者、なるほどと頷く者それぞれだったが、この場の疑念を一身に受けているのはァ千代に違いなかった。


ァ千代「ふん。私が濃姫を疑ったのと同じ理屈か。宗茂が襲われた以上、疑われるのは覚悟の上だ。が、仮に宗茂が私の獲物であったとして、危険を冒してまで襲う必要があったのか?」

「あの……、私もそれが気になりました。獲物の殺害は最終的な勝利条件には影響しませんし、宗茂殿は白判定を得ていたわけではありません。その点において、姫様とァ千代さんの状況は異なると思います」

ァ千代「そうだ。この遊戯の規律から察するに、人狼は狂人や妖狐が誰かは知らぬ。自分の獲物がその二者ではないと、どうしてわかるのだ?」

正則「確かにそうだよな。俺だったらやっぱり確実な所、狙うと思うんだけどよぉ」

元就「自分を基準に考えてはいけないよ――――と言いたい所だが、私も同意見さ。仮に宗茂が獲物だとして、危険を冒す理由が見当たらない」

左近「危険を冒す理由、ですか。こればっかりは人狼じゃなきゃ、分からないと思いますがね。『人狼は獲物に投票できない』この規律を考えると、人狼が獲物を目前にどれほど自分を律せられるのかわかりゃしません」

幸村「実は私も同じことを考えました。相手が人外の獣であるならば、その心中は欲望に満ちているのではと……」

ァ千代「なっ、貴様!」

「待ってください、憶測で判断するのは危険です。私たちが知っている規律は『人狼は獲物に投票できない』という事だけです。もし獲物を前に自制が効かなくなるなら、獲物はすでに襲撃され尽くした事になってしまう」

くのいち「でも、じゃあどうして宗茂さんは襲われたんで?」

「分からないけど、宗茂さんが人間だって確信してたとか、宗茂さんが人狼にとって不利になる発言をしてたとか……」

左近「確信? そりゃどうでしょうね。今までの宗茂さんの発言から、そんな印象は受けませんでしたよ」

半兵衛「宗茂の発言、ね。うーん……、あいつずいぶん縁者の序列に拘っていたよ?」

幸村「それが確信に繋がったと?」

半兵衛「可能性はあるかも。縁者の序列を廃止する事が、人狼にとって不利になる……とか」


 そして、半兵衛の視線は甲斐姫に向けられた。半兵衛の視線の意味を理解し、甲斐姫がかっと怒りを表情に浮かべた。


甲斐姫「なによ、縁者がいないからって、あたしが怪しいって言いたいの?」

半兵衛「べつに? ただ、序列が残ったままなら、縁者のいない人間は疑われるのが最後だったなって」

甲斐姫「あたしにして見れば、あんたの発言の方が怪しいわよ! 宗茂さんともぶつかってたし、序列を失くすことに最初反対してたじゃない。それに元就さんだって、縁者はいないんだからね!」

元就「おっと、ここで私かい?」

半兵衛「ま、縁者がいないからって、即人外だと決め付けはしないよ。俺と君は対抗者だし、どうせ疑ったって信じてもらえないからね。それに俺が反対したのは、序列を失くして投票が分散する事に対してだよ。そもそも俺が人狼なら、序列の撤廃はむしろ歓迎すべきじゃない? 俺は君より断然、縁者は多いんだし」

甲斐姫「それは……、そうよ。でも!」

元就「待ってくれるかな。君達の会話でふと気が付いた事があるんだけれど、宗茂は序列の撤廃の他にも自由投票に反対していたね」

甲斐姫「あ」


 瞬間、三者の視線がァ千代に集まった。何を疑われているのかを察し、ァ千代が声を荒げる。


ァ千代「何だ。それがどう人狼に繋がるというのだ!?」

甲斐姫「自由投票って投票者の票の動きを見れる反面、人狼を炙り出す事が出来なくなるわよね? それって……、人狼にとって有利なんじゃないの?」

清正「待て。官兵衛は現段階では、と付け加えたはずだ。自由投票の有用性を捨てたわけじゃない」

幸村「しかし……あの段階で、提案すべき事だったのでしょうか?」

正則「い、いや、でもよぉ。ただの意見だろ? 最終的には自由投票は諦めたじゃねぇか」

三成「それは結果論だ。もし周りがァ千代に同調していたら、あのまま自由投票になっていた可能性はある」

「でもそれは宗茂さんを襲撃した理由には繋がらない。そうでしょう?」

甲斐姫「そうね。でも、疑う要素が……多すぎるわよ。宗茂さんの唯一の縁者で、人間である濃姫を一番に疑った。そして自由投票の提案。今日の候補の中じゃ、一番疑わしいわ」


 まるで余罪を挙げるような甲斐姫の言葉に、ァ千代を擁護していた者たちはそれ以上の言葉を失った。ァ千代の処断に懐疑的だった他の者も、それ以上の反論を紡げずに黙り込む。
 そして、最後の決断を下すように、沈黙を守り続けていた官兵衛が処刑者の名を挙げたのだった。


→ァ千代
半兵衛→ァ千代
官兵衛→ァ千代
三成→ァ千代
清正→ァ千代
正則→ァ千代
左近→ァ千代
元就→ァ千代
ァ千代→幸村
幸村→ァ千代
くのいち→ァ千代
甲斐姫→ァ千代


元就「すまない、ァ千代。私たちには君が人狼ではないと判断する手段が……」

ァ千代「言うな、元就。末期の時までごちゃごちゃ泣き喚くつもりは無い。立花であれば、潔く散ってやる」


 そして、ァ千代は処刑された。
 また一人――――
 血の匂いを深く感じながら、一同は夜を迎えるべく自室へと帰っていった。


四日目・昼 終了
<生存者>
半兵衛(霊能者? 暫定白)、官兵衛(共有者)、(暫定白)、三成(占い師?)、清正(暫定白)、正則(暫定白)、左近、元就(占い師?)、幸村、くのいち、甲斐姫(霊能者?)
<犠牲者>
秀吉、信長、宗茂
<処刑者>
ねね、濃姫、ァ千代




end


四日目の終了です。
だいぶ人数が絞られてきましたね。
さて、次の犠牲者は一体誰になる事やら……
次回へ続きます。