占い師による呪殺、狩人の守護、人狼の襲撃の対象が重なった場合、呪殺・守護・襲撃の順に有効となる。
仮に占い師が襲撃されても、その夜占い師が妖狐を呪殺していた場合、呪殺は有効となり次の日の昼、妖狐の躯が挙がる。
仮に占い師が呪殺を成功させ、守護、襲撃の対象が占い師だった場合、次の日の昼、妖狐の躯のみが挙がる。
『規律 その陸』
狩人の守護は間接的なものであり、守護に成功しても狩人は人狼の正体を知る事が出来ない。襲撃された者も同様、人狼の正体を知る事は出来ない。
『規律 その漆』
人狼が妖狐を襲撃した場合、人狼はその晩、幻覚を見せられているため実際に襲撃に成功したのか失敗したのか、判断する事が出来ない。次の日の昼、襲撃したはずの人物の死体が挙がらない事から、初めて襲撃が失敗した事を知る。
だが、死体の有る無しのみしか判断できないため、人狼からは襲撃した相手が妖狐だから失敗したのか、狩人が守護したため失敗したのか知る事は出来ない。
人狼の館05
「この遊戯のこと、ずっと考えていたけど……きっと明日は推理らしい推理は出来ないんじゃないかと思います。そうなると、たぶん何人かの候補者に投票して、一番票が多い人が処刑者に選ばれるのですよね? でも、十七人中人外は四人。確率は限りなく低い。だったら、最初の処刑者は最初から決めておいて、情報が集まる三日目から推理した方がいいと思うんです」
皆一様に驚きの眼差しでを見ていた。
その中でただ独り信長だけが、泰然とした笑みを浮かべている。
「くく、犠牲となる……か」
「誰も私が何者なのか分かりません。妖狐や狂人であれば不穏分子を除けますし、人間であっても無作為に選んで三日目以降の推理に雑音を入れるよりいいと思うんです。勿論、私が人狼だと疑っている方もいるかもしれませんが……だったら尚更、二日目で一人仕留められるのは有利だと思うんです」
現段階ではが人狼かどうかは判断できないが、それは三日目の昼になればわかる事だ。霊能者が霊視で判断し、の正体を見破る。勿論、人狼でなければその正体は謎のままだが、それは以外の誰かを処刑者に選んでも同じ事だ。
「もし、明日私が何を話しても、この決定を覆さなければ私が狂人や妖狐であった場合も防げます。そうすれば霊能者は四日目まで名乗り出る必要がありません。霊視の結果が何であれ、不利益にはならないからです。だから、明日の処刑者は、」
「だめに決まってるでしょう!!」
今まで黙っていたねねが、の声を大声で遮った。
「あたし達にを殺せっていうの!? どうしてそんな我侭が言えるの!!」
ねねの顔は怒っているのに、血の気が失せて紙のように白かった。
「でも、おねね様。考えてみて下さい。この遊戯は人間が勝てば、犠牲者は蘇生できるのでしょう? なら私は皆さんを信じて、命を捧げます。それに、もし蘇生できなかったとしても、皆泰平の世を為すため、失えない方ばかり。だったら、私は」
「!」
瞬間、ねねの平手がの頬を打った。パァンと激しい音をさせたが、それは音だけでにその衝撃は伝わって来なかった。
だが、ねねの怒ったような泣き声に、は痛み以上の苦痛を感じた。
「どうして? どうして、そんな事いえるの……? 子供を殺して生き残れって言うの?」
「だから、おねね様。それは……」
言いかけて、半兵衛がそれを遮った。
やめておきなよ、と首を横に振る。
これ以上の発言はねねの極限の精神状態を更に追い詰めるだけだ。涙は人に伝播する。冷静に見える面々も、いつ取り乱すか分からない。
「それにそういう発言はあまり賢いと思えないよ。意地悪な言い方になっちゃうけど、が人狼じゃないって証明が俺たちには出来ないんだ。あえて不利な行為で信用を得て、明日の議論を優位にしようと考えていると思われるかもしれない」
「それは……」
反論できなかった。自分への疑いを反らすためと言われれば、潔白を証明される手立ては無い。
「あと万が一、が狩人や霊能者とか重要な役割だったら大変だからね。処刑を撤回できない、というのが裏目に出る可能性がある」
「加えて、他の者へも迷惑をかける。お前は泰平の世を為すのに欠かせぬと言った。それは誰だ? 信長様か? 秀吉様か? お前が自ら命を差し出す事で、その者たちを庇っているのではないかとあらぬ疑念を他へ及ぼす。真偽はどうあれ、お前が人狼と疑われれば、お前の庇う人間も共に疑われるのだぞ?」
官兵衛の静かな、だがはっきりした声は、痛いほどの胸の奥へ突き刺さった。
その通りだ。遊戯はすでに始まっている。
何かを発言すれば、必ずその裏を疑われて当然なのだ。
「申し訳ありません。軽率でした」
は一同に向けて、深々と頭を下げた。
疑うような視線はなかったが、正直どのくらいの疑心を与えてしまったのかには分からない。皆の助けとなるためのはずが、逆に余計な疑念を抱かせてしまった。
「その……なんじゃ。の性格はみんな知っとるじゃろ。わしはが保身のために、そんな事を言ったとは思えんのさ。それに幸いまだ一日目の昼じゃ。ここはわしに免じて、の発言は水に流してもらえんじゃろうか?」
秀吉の言葉に一同はそれぞれに頷いた。
「当たり前だよ! うちの子が嘘なんて付くはずないもの!」
「俺も秀吉様とおねね様に賛成です。の事を疑いたくない」
「おっ、俺も当然、清正と同じ意見だからな!」
「馬鹿が……。と言いたいところだが、の意見にも一理ある。有効とは思えんが、今日は見逃そう」
「ま、さんらしいじゃないですか。俺も本心だったと信じていいと思いますよ」
「俺と官兵衛殿は当然、の味方だよ!」
「今ばかりはな。嘘を付くならばもう少し上手く付く、と判断したまでの事」
「そうだね。私も信じていいと思うよ。歴史的に見ても、裏の裏をかいてそのまた裏というのは」
「元就公、話は手短にお願いします。まあ、俺もそういう意見は嫌いじゃない。自己犠牲は褒められないがな」
「立花なれば真実を見抜けて当然だ」
「殿! その忠義の心、ご立派です!」
「ま、幸村様もそう言ってるし〜、ちんの言った通り、狂人と妖狐が決まる前だしね。あたしも信じるぜぃ」
「そうね。もともと撤回できないようにするつもりだったんだから、あたしも本心からの言葉って信じていいと思う」
「くくっ、よい、ぞ……。うぬが望み、この信長が聞き届けた」
「いいわ、今日の発言は忘れましょう? 優しい人たちに感謝する事ね」
は安堵の吐息を漏らすと、再び一同に向かって感謝を込めてこうべを下げた。
end
秀吉への全員の同意。
ちょっと長かったかなと思いましたが、一応全員の反応という事で書きました。
ゲームはすでに始まっております。
信頼回復と取るか、疑念が残っていると取るかは読者の皆様のご想像のままに……
そしてヒロインもまた、本心から口にした言葉だったのか、
ねねの反対を予め予測し信頼確保のために動いたのか……
それも皆様のご想像のままに。