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恋花 余談





 甘美な口付けにがうっとりと目を蕩かせていると、とたんに視界が反転した。
 え、と声を上げるよりも早く、広がった天井を遮るように、半兵衛がにこにこと微笑みながら見下ろしている。
「あの……」
 途端に背筋が冷たくなるような、厭な予感がした。
 だってさぁ、と半兵衛は呟くと、
「ギンちゃんも早く懇ろになれって言ってるし。確かに俺もゆっくりしすぎたかなー、って思ってんだよね」
 何を、とは問わない。
 問うた瞬間、悪い予想が現実のものになってしまうような気がするのだ。
 だが、
「こういうのってお互いの気持ちが大事かなって思って遠慮してたんだけど。まあ、こういうやり方もあるよね。俺の存在を確かめてもらってから、にはゆっくり理解してもらうって事で」
 さぁぁっと血の気が引いていく。
 確かめるとか理解するだとか、婉曲的な表現を用いているものの、つまりそれは男と女が番うという事なのだろう。
 誰と……誰が?
 今さっき自分の感情を理解したばかりのには、さすがにそれ以上の行為は荷が重く、及び腰になってしまう。
「ま、待ってください! 私も無理やりは嫌です。こういうのって、そのゆっくり……」
 顔を赤らめて抵抗したが、の伸ばした両手は易々と半兵衛の手に捕まってしまった。
 心配しなくていいんだって、と何をどう読み取ったのか、半兵衛は優しげな笑みを浮かべ、
「俺がちゃんとが俺のこと好きで好きでたまらないんだって、教えてあげるから。ね?」
 そしてゆっくりと覆いかぶさってくる半兵衛の身体。
 の精一杯の抵抗も空しく――――その日一日たっぷり時間をかけて、は竹中半兵衛という人間を嫌というほど意識させられるのだった。



end


結局、お約束として、最後は半兵衛先生が美味しい目にあうのでした。
これにて「恋花」完結です!
ここまでお付き合いくださり、ありがとうございました。
ひよ様、素敵なリクエストをありがとうございました。
またいつでもリクエスト、お待ちしております!