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097.けじめ





「それでいつにしたらいいかなぁ?」
 何気なくそんな事を聞かれ、は振り返らないまま何がです? と聞き返した。
 背後ではフェリシアーノがソファに寝そべって、スケッチブックに鉛筆を走らせている。
 フェリシアーノも視線を紙面に落としたまま、だからぁ、と言葉を続け、
「俺たちの結婚式」
 その瞬間、の手の内からティーカップが滑り落ち、ガシャンと派手な音を立てて割れた。
「ヴェ、だいじょうぶ!?」
 驚いてフェリシアーノがソファから飛び起きる。幸い中身が入っていなかったのでカーペットを汚す事はなかったが、砕けた陶器の破片がそこら中に飛び散っていた。
「あ、ごめんなさいっ!」
 慌てては破片に手を伸ばしたが、慌てていたが故に指先を破片で切ってしまった。とろりと浮かんだ赤い血に自分は何をしているのだろうと呆れていると、ふいにフェリシアーノの両手がの手を包んだ。
「あの、カップ割ってしまって、ごめんなさ、」
 言いかけた言葉はそこで止まる。
 ごく自然な動きで、フェリシアーノはの指先に唇を寄せると、鮮血の浮かんだそれを己の口の中に招き入れた。
 ちう、と軽く吸われ、痺れるような痛みが走る。だが、痛みを感じる余裕など、今のにはまったくなかった。
 柔らかな舌先と、暖かな口内、至近距離に寄ったフェリシアーノから香る甘い香水の香り。その全てがの身体中の血を沸騰させるかのように、心臓を、脳裏を、理性をかき乱す。
「あ……の……」
 間抜けな声しか上げられない。
 フェリシアーのは指先を口に咥えたまま、ふいに視線を上げた。上目遣いにの赤面した顔をみやり、口を離すと、
「責任、取るからね。最後まで」
 甘い掠れた声が耳朶を撫でた。
 何枚ものウェディングドレスのデザインがスケッチブックに描かれていた事を知るのは、すぐ後のこと。

end


お約束ネタ。
責任とって下さいなんて言われたら、はい、よろこんで!