094.爪痕
自分がつけたらしき爪痕がその背にいくつも散らばっているのを見て、何故だが行為そのものより恥ずかしくなってしまった。
ベッドから注がれるその視線に気づいたのか、神威が得意げな顔で笑う。
「男の勲章だろ?」
「……ドヤ顔して言うことじゃないと思う」
ジト目で言い返すが、自分がつけた当人なのでこれ以上言えることがない。のジレンマに気づいたのか、神威は笑みを浮かべながらわざとらしくの地雷を踏みに来る。
「有頂天にならせてよ。がこれだけ俺のこと欲しがったって証拠なんだから」
「……どうせすぐ消えちゃうでしょ。夜兎なんだから」
「どうかな? その夜兎の肌に爪が食い込むくらいだから、しばらく残るんじゃない?」
「誰も見ないんだからどっちだっていいよ」
「が見るでしょ?」
どうしてこの男はこういう時だけ底意地が悪くなるのだろうと、は三角眼で神威を見返した。嬉しそうな顔が忌々しい。
ベッドサイドに腰を下ろし、神威の指先がの髪を撫でる。
「力加減出来なかったんだよね? こんなに痕になるくらい」
「そう、力加減出来なかったんだ。出来たらえぐるくらいの穴開けてやったのに」
互いに挑むような顔で応酬しあって、だがいつでも上手を取るのは神威の方だ。
「じゃあ、やってみせてよ?」
挑むような顔で額にキスをして、そのまま覆いかぶさってしまうのだからに逃げる方法などない。
せめて背中に大穴を開けてやろうと、は背中に回した指先に力を込めた。
end
これでも彼らはラブラブなのです(たぶん)