071.泣き落とし
「ごめんなさいーーー! 二度としないから嫌いにならないでぇぇぇぇぇ!!」
神に祈るより時も熱心に、両手を組み合わせ、跪いて懇願する。大の男がぼろぼろと涙を零し、鼻水も垂らしかけて泣きじゃくっている姿はお世辞にも格好いいとは言えないが、どうにもはフェリシアーノのこの顔に弱いのだ。
大きな瞳に涙を溜めてじっと見つめられると、雨の日に捨てられた犬猫に感じるような庇護欲と得も言えぬ罪悪感を覚えさせられる。
「に嫌われたら俺生きていけないよぉ。嫌だよ、別れたくないよぉ」
悪いのはあっちなのに。いつもこれで甘い顔をしてしまう。
何度こんな事を繰り返したか分からないが、大分自分も懲りないものだ。
「もう……分かりましたから泣かないでください」
溜息をひとつ付いて、フェリシアーノの前にしゃがみ込むとハンカチで涙を拭ってやる。
「ヴェ……ほんとう? もう怒ってない?」
「ええ、怒っていませんよ」
「本当に本当? 俺のこと嫌いじゃない? 好き?」
「勿論です。こんなことで嫌いになったりしません」
「じゃあハグしてくれる? キスもして欲しいであります!」
「………」
本当にこの人は ――――
呆れながらも、甘やかしたのは自分のせい。自業自得と自身に言い聞かせ、背に両腕を回し触れるだけのキスを頬に落とした。
これでいいですか、と頬を染めて見返せば、何やらキラキラと両目に星を溜めて感動している姿。
あ、まずいスイッチ押しちゃったかも……
「ー! 可愛い! Kawaiiー! わはー、俺の彼女サイコ〜〜!」
まるで主人にじゃれつく大型犬のように、無遠慮にフェリシアーノはに覆いかぶさりハグやら、頬ずりやら、キスの雨を降らせた。
ここまでならまだ許せる。まだ可愛らしさの欠片が残っている。
だが、するりと抜け目なく伸ばした指先が襟元を寛げ侵入し、
「ねぇ……俺、ベッドまで待てないかも」
可愛らしさの中にイタリア男の本性を見た。
「………」
どうしてこう ――――
懲りないのだろう。互いに、学習能力というものがない。
溜息を一つ漏らして、はフェリシアーノの襟元を掴み上げると、そのまま力を込めて背後へと投げ飛ばした。ギャンと情けない声を上げて、フェリシアーノが大の字になって倒れる。
その様を見下ろしながら、
「真っ昼間から盛るなと何度言えば分かるのですかっ!」
怒号を上げて、そして再び振り出しへ戻る。
end
白くたって黒くたって攻めるよ。
だってイタリアーノだもの!