069.ぬけがけ
「貴方の考えている事なんてお見通しなんですよ」
と、鼻を鳴らして笑った。
てめぇ、このヤロウと顔に青筋を立てる白澤だったが、怒り八割寂しさ二割と言った心境である。
話は至極単純で、が桃源郷印の桃饅が好きだと言う情報をゲットしたのが発端だった。鬼灯のお遣いで薬局に来ていた時 ――――
勿論、鬼灯は白澤不在の時を狙って遣いに行かせていた ――――
、茶請けに出した桃饅にえらく感動していたのだと聞く。その話を桃太郎から聞いた白澤は、との交流を邪魔する鬼灯の小癪な妨害に腹立ち、また同時に妙案を思いついていた。
会えないなら、自分から会いに行けばいいんじゃないか、と。
思い立ったが吉日とばかりに、すぐさま目当ての桃饅を購入し、こうして地獄くんだりまでやって来たのだが、補佐官の執務室には忌々しい鬼神の姿しかなかった。
その憎たらしい鬼曰く、鬼門の方角から邪な気を察知しましたので外回りに出しました ――――
誰が邪な気だと噛み付けど、鬼灯は歯牙にもかけずはっと鼻を鳴らして笑う。
そして、冒頭の台詞に戻るのだ。
「あー、もー。お前ほんとに邪魔。人の恋路を邪魔する奴なんて、牛頭馬頭に蹴られて六道輪廻に落ちればいいんじゃないの?」
「あいにく六道への出張は先日行ってきたばかりです。それより邪魔なんで、用がないならとっとと帰ってくれませんか?」
ああ言えばこう言う、本当に減らず口のたたない奴だ。
「ああ、ああ! 言われなくったって帰るよ! お前なんかと話したって時間の無駄だからね!」
白澤は一頻り喚くとのデスクに土産を置き、文句を言いながら去っていった。
「こっちだっていい迷惑ですよ」
と、白澤の去った扉を見据えて一言呟き ――――
鬼灯は迷いない手で土産の袋を開くと、大きな口を開けて桃饅を頬張った。
まるでそれが白澤自身であるとでもいうように、完膚なきまでに咀嚼し食べつくす。
最後にずずっと湯のみの茶をすすり、
「私の目の黒いうちは、ぬけがけなんて絶対に許しませんよ」
end
人の土産を食うなよ!
という白澤様のテレパシーが聞こえそうですが、ギャグなのでご了承をば。
きっと食べた桃饅分の糖分は、鬼灯様が何かべつのお菓子をくれます。