062.独占欲
独占欲という言葉がこれ以上似合うはずなのに、神威自身はその言葉を理解しない。
完全にナニソレ、美味しいの? 状態だ。
アンタのことでしょーが、と言ってやると、ふうんと興味のなさそうな顔。この男にして見れば、それがどんな言葉であろうと、外からどう見えようと関係ないのだ。
「ハッキリ言って、アンタ異常だぜ?」
ため息交じりに告げた阿伏兎に、神威はケラケラと軽薄な笑みを寄越す。その笑みの意味を、それで? とどうでもいいよ、の両方だと阿伏兎は受け取った。
元より常人に理解できるとは思っていない。阿伏兎のような常識人には、このぶっ飛んじゃってる我らが団長様の思考など欠片ほども理解できない、むしろ出来てたまるかという想いでいっぱいだ。
好いている女に首輪をつけて、他人が触れる事も、喋る事も、実は視線を交わす事すら厭っている。その上、が他人に対して関心――――そう、殺意などの悪しき感情を抱く事さえ嫌っているのだ。
そんな風に知らない奴の事で頭をいっぱいにしないでよ。俺の事だけ見ててよ。
いっその知る人間など自分独りで十分だと思っているほどの、独善的な想いでいっぱいの――――愛情?
そんな陳腐な言葉しか思いつかず、己のボキャブラリーのなさに阿伏兎はハッと鼻を鳴らして嗤った。
愛? 笑わせてくれる。
それを愛と呼ぶなら、この男の世界はひどく欺瞞に満ちている。
こんなのはただのわがままだ。ガキんちょがお気に入りの玩具を、四六時中手にして離さない様なもの。
あるいは、もしかしたら乳飲み子が母親に向ける、感情のようなものに似ているのかもしれない。神威自身はひどく嫌がるだろうが――――腹がすけば、乳を飲ませろとせがんで暴れるのは、なんとなく今の神威と重なるような気がした。
「なんだよ気持ちワルイ」
薄ら笑いを浮かべていた阿伏兎に、神威はむっと眉根をしかめる。
「いや、べつに」
そう応えつつも、更ににやけた笑みを深める阿伏兎に、神威は呆れたような顔を向け、
「それよりお前。そんな顔で、のこと考えてたら殺すからね」
やっぱり人一倍どころか何倍も、独占欲に満ち満ちているのだった。
end
今日も兄ちゃんはいつも通り。