058.有害指定
明らかに鬼灯と白澤の場合で態度が異なる。表情、目線、語調、発汗、おそらく胸部に手を当てれば心拍数から異なるのではないかと思う ――――
勿論、触ってみたいけど殴られるからそれは自重するが。
男性恐怖症を克服しかけたとはいえ、未だににとって白澤は無意識に緊張する相手なのだと思うと、傷つかないでもなかった。明らかに白澤と話をする時、警戒している節がある。近づくと退く。一歩寄れば、一歩しりぞく。だから二人の距離は縮まらない。
「あ〜あぁ、あの乳は僕のもののはずなのになぁ」
焼酎の入ったコップを一気に煽ると、酒気とともに溜息を漏らす。
「バカな事を言っていないで現実を見なさい。あなたと昔交わした契りなんてとっくにさんは忘れていますよ。あと、あれは私のものです」
と、隣りでざるの如く淡々と日本酒を飲み続ける鬼灯が、しれっとした顔で自分の所有を主張する。
仲は悪いのに何故か行動範囲は被っていて、意図せずとある屋台で合流してしまった二人。酔いも手伝ってか、二人の話題はもっぱらの事ばかりだ。
「告白の一つもした事が無いやつがよく言うよ。確かにちょっと怖がられてるけど、僕はちゃんと気持ちを伝えて意識してもらえてるんだからね」
「私はあなたのように軟派じゃないんですよ。大切な事はいざという時まで口にしないのです」
「へ〜、それって僕とちゃんが恋人になった後とか?」
「そんな未来は永久に訪れないのでお構いなく」
酒がなければそのまま殴り合いにでも発展していたであろう。が、話題が話題であるだけに、酒の注がれたコップを放り出して、殴りあう気にもなれない。
「正直、僕はお前が羨ましいね。毎日、ちゃんに会えて、ちゃんの笑顔も独り占めで。この野郎、爆発しろ」
「貴方には私の苦労なんてわからないでしょうね。私がどれだけ気を使って我慢しているか。ふかふかの羽毛をモフり倒したいのを、セクハラになるから必死に耐えてるんですよ」
「僕はそんな性癖ないから安心だね。ただあのほっそい腰とか、さらさらした髪とか、あと乳とか触りたいなぁって思ってるだけだし」
「貴方がセクハラで訴えられたら、傍聴人として見に行ってあげますよ。有罪になる瞬間とか爆笑ものでしょうね」
「うるさい。僕は欲望に正直なんだよ」
「この淫獣が」
「うるさい、むっつり」
そんな罵詈雑言の応酬を繰り返し、やはり最後は溜息に続く。
互いに脳裏に淫らな妄想を抱いて、
『あぁ、柔らかいんだろうなぁ』
end
どっちも有害指定。
鬼灯さんは上手く隠すので危険視されてないけど、中身はむっつりだと思う。