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048.非常識人間





 貴方はとても非常識な人。
 日本では挨拶にハグやキスはいたしません。そんな私の説明を無視して、貴方は何度も私を抱きしめキスをする。
 会う度に好きとか可愛いとか、そんな言葉は容易く口にしてはならないのです。
 想う気持ちは胸の内、そっと想うのが美徳というものですから。


「ヴェー、なんで?」
 顔を真赤にして説教をしていたは、フェリシアーノからの真直ぐな質問に言葉を失った。
「な、なんでって……」
「だって俺、に会ったらハグしたいしキスしたくなっちゃうもん。好きなのも可愛いのも本当だし、黙ってるなんて出来ないよー」
 そこを黙って忍ぶのが日本男児 ―――― と言いかけ、ああ、この人は日本人ではありませんでした、と思い直す。
「で、でも……そういう事は表立っては……」
「だって俺、我慢できないもん」
 あっさりと白旗を振られては、それに続く言葉がない。我慢してください! と言ったところで、帰ってくる言葉はごめんね、無理なんだ。
 とて西洋文化に慣れようと努力はしている。が、ハグもキスもされるだけで真っ赤になってしまうし、往来の人の目の前で見せつけるのはやはりいけない事をしているような気分になってしまう。そう、日本では恋心とは秘め事なのだ。決して表に出さぬし、隠すからこそ強くなるもの。
 だが、そんな日本の常識はこの人には通じない。
「俺、からも”挨拶”してほしいな」
 えへへと無垢な笑顔でお願いされては、は断るすべを持たないのだ。


 俺はきっと非常識な人。
 君の家の文化を知っていながら、みんなの前でキスもハグもしたくなっちゃう。
 だって君のこと大好きなんだもん。
 俺とはこんなに仲良しなんだよって見せつけたくなっちゃうんだ。だからお願い許して?





「Boooooo,君の所のキスって2回じゃなかったかい? 俺の目にはもう4回以上してるように見えるんだぞ」
「ヴェー、イタリアって地域によって回数違うんだよー。あ、アメリカは確か1回だけだったよね?」
「……べつに法律で決まってるわけじゃないんだぞ」

end


国によって挨拶のキスの回数は異なるようなので。
きっと親しさや地域によって違いますが、
アメリカ1回、イギリス・イタリア2回、フランス3,4回、ドイツ握手だけ、のつもり。
きっとフランシス兄ちゃんがこの二人の後ろで「じゃあ、お兄さん4回キスしていいのねー」とか言いながら全裸待機してると思います。(そしてボコられる)