Text

 今思えばそれはイタリア男のしたたかな策だったのかもしれない。



039.じれったい





ー! チャオ、チャオ、チャオ〜!」
 まるで戦艦が突撃を食らわすような勢いで、フェリシアーノはの小さな身体へと飛びついた。背後からの突然の襲撃に、は無意識に襲撃者の腕を掴み、もう一方の手は胸ぐらを掴みあげて投げ飛ばす。見事な一本背負いが決まった所ではっと我に帰るのだ。
「ご、ごめんなさい! 急に飛びついてきたりするから条件反射で……!」
 どんな条件反射だと周囲が胸中で突っ込むのにも気づかず、は慌ててイタリアへの元へと駆け寄ると、地面に張り付いた彼を助け起こす。
「えへへ、今日もいいイッポンゼオイだったね〜。俺にも今度ジュードー教えて」
 普段ヘタレで痛みに弱いイタリアだが、相手が女の子だからか痛みすら感じぬようないい笑顔で微笑みかける。当然ついでに口説くのも忘れない。寝技とか使ってみたいな、などとどこかの愛の国のようなセクハラも持ち前のスマートさでさらりと言ってのけて見せる。
 だが対するは祖国伝来の鈍感さと八つ橋で、何おっしゃっているんですか、と軽く流してイタリアの手を引くのだった。
 はてさて。実はこうしてイタリアがに投げ飛ばされるのは、今日が初めてではない。イタリア自身が言うように、実は”今日も”投げ飛ばされたそれは一種の慣習のようなものなのだ。
 そもそも初めて出会った時から、イタリアは相手の文化などお構いなしにハグやキスを迫ってに投げ飛ばされた。二回目は少しは学んだかと思えば、前回の出来事など綺麗さっぱり忘れてしまったかのようにまた投げ飛ばされた。
 三回目ならばいい加減懲りると思いきやそれでも盛大に投げ飛ばされ、四回目についにドイツによって制止され何時になったらお前は学習するのだと叱られ、ちぇっと拗ねたような顔でこう言った。
「俺痛いの嫌いだけど、に抱きつきたいしキスしたいんだもん」
 正直だ。実に色々と正直だ。
 これにはさすがのドイツも、一瞬どこから叱ればいいのか分からず言葉を失った。勿論その後、滾々と説教を垂れたわけだが、イタリアの耳に念仏とばかりに、ドイツの苦労は虚しくその後も同じような事が続いている。実に数年の時が過ぎ、いい加減どちらかが慣れてもいいものだが、そんなものが延々と繰り返されているのだ。
「ねーねー、はいつになったら俺にハグさせてくれるの〜?」
「だから背後から突撃しないでくださいと、何度も申し上げているでしょう」
「えぇ、でも前から突撃してもウチマタガリかけられたよぉ?」
「だ、だから、こういう挨拶は慣れなくて……それに他の方に見られているのも、恥ずかしいですし……」
「そんな事いわないで慣れてよぉ。俺との挨拶だけでいいから。ね、ほら練習、練習〜!」
 そして再び何百回目になるのか分からないイタリアが投げ飛ばされる音。
「ご、ごめんなさい! わざとじゃな……ちょっ、だから抱きつかないでください!」
 もう何が何やら分からず、ドイツはただ頭痛を覚える米神に指をあて深々と溜息を付くのだ。
の頑なさもここまで来ると見上げたものだが、イタリアの不屈の精神も根性だけは見事なものだ。それが決して他の所で活かされる事はないが ――――
「ねぇ、毎日俺とハグしたらきっと慣れるよ? キスの仕方だって教えてあげれるよ?」
「そんなの破廉恥です!」
「ヴェー? ただの挨拶だよぉ。ね、これが友達のキ……、ス」
 ビタン、とまた何かが地面に叩きつけられる音がして、ドイツはやれやれと肩をすくめた。

end


殺伐やら狂愛やらばっか書いてたので、ほのぼのいちゃいちゃしたのを書きたかったのに、
なんか激しく失敗した感。
日本さんが居ないのでドイツさんに代弁していただきました。
イタちゃん別にMに目覚めたとか言うわけではないです。
ただヒロインを困らせて、かまって欲しいだけなのです。