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038.宣戦布告




「これ以上、さんに付きまとうならミンチにしますよ」
 喧嘩を売るにしては遅すぎる台詞を、まるで今思い出したかのように鬼灯は言い放った。
 なにを今更、と白澤は無言で嗤う。
 白澤がに近づくたび、声をかけるたび、手で触れるたび、瘴気のような禍々しい殺気を全開にするくせに。なにを今更、宣言する事があるのか。
「やってみれば?」
 ふふん、と鼻で笑ってやる。
 苛立ちながらも、実際には嫌がる素振りすらの前で見せられないくせに、何を息巻いていいるのやら。
 嫌なら鬼灯も同じ事をすればいい。
 危うい距離を越え、馴れ馴れしく声をかけ、無遠慮に触りその柔らかな感触を確かめればいいのだ。
 どんな感情が邪魔しているのか大よその見当はつくが、それが出来ないくせに白澤に喧嘩を売るなど心得違いも甚だしい。
「僕をミンチにしたところで、お前の気持ちなんてまったくちゃんに届かないけれどね」
 ま、僕が黙ってミンチになるはずがないけど――――
 そう付け足して白澤がせせら笑った瞬間、前触れなく鬼灯の巨大な金棒が白澤を襲った。
「あっぶな」
 白澤はそれをひらりとかわし、凶器は空を切ったわけだが、鬼灯の放つ殺気は衰えることなく、むしろ先ほどより増しているようですらある。
 図星をさされて悔しいか。
 白澤の唇に嗜虐的な笑みが浮かぶ。
 言葉でもっと嬲ってやろうか、それとも力で叩きのめしてやろうか。普段、人を痛めつけるのは自分の専売特許のようにしているコイツが、完膚なきまでに叩き潰されたらどんな顔をするのか。
 まるで鬼灯の毒気が白澤の神気を穢すように、白澤の金色の瞳に獣の光が宿っていく。
 嗚呼、こんな破壊的な気持ちになるのはいつ振りだろう――――
 白澤は薄い唇に冷笑を浮かべて、
「やるなら相手になってやるよ、餓鬼。人類が誕生してから生まれた奴なんかに、この僕が倒せるだなんて思い上がるな」




end


この二人のガチバトル見てみたい。