いつだったかそう聞いたことがあった。
「なんで?」
聞き返した声に、答える。
「独りぼっちだから」
意外そうな顔で、は少し目を見開いた。
035.一匹狼
意外だったのは実はもう一人。その場に偶々居合わせた ――――
というより、居合わせたその場で偶々神威がそう口火を切ったのだっろうが、阿伏兎もその問いかけを意外に感じた。
理由は三つ。我らが団長様に寂しいなどという感情が理解出来たのかという驚き。他人を気遣えるような優しさなのか慈悲なのか分からないが、そんなきめ細やかな事が出来たのかという謎の感動。そして恋人である自分がいるにも関わらず、独りぼっちだと言い切った事についての違和感。
の出自だとか、来歴だとか、そう言ったものを言っているのでもないだろう。確かには白兎という特殊な種類だし、出身の犯罪組織は神威がぶっ潰してしまった。ついでに言えば、家族もいない。
天涯孤独の身。だが、幸か不幸か恋人は居る。
それなのに、独りぼっち?
は少しだけ驚いた顔をしてから、べつに、と無関心に応えた。
「独りぼっちでもあんまり寂しくないかな。仲間意識とかそういうの、元々薄いみたい」
この返答に阿伏兎は二重に驚いた。
なんだよ、そこ肯定すんの? アンタぼっちなの?
と、恋人である神威に加え、毎日こうして顔突き合わせている自分は仲間ではないのかと、少しだけ傷つく。
だが神威はその回答に満足したようだ。
「そうなんだ、独りぼっちなんだ」
と、嬉しそうに繰り返している。そこに至りなんとなく彼が、どんな意味合いで喜んでいるのかを理解する。
この厄介な男は、他人に無関心で何人たりとも同胞と認めない女を、愛しているんだなと思った。そしてともすれば、その事に悩み、寂しさを感じているその心を、愛おしく感じているのだ。
仮に寂しいと感じていても、神威自身救ったりしないし、救われたいとも思っていないを評価している。そもそも恋人などという肩書で、自分の存在が侵食されてたまるかと邪険にするくらいが好ましい ――――
なんて、そこまで想像を広げて、相変わらずの分かりづらい愛情に阿伏兎は頭痛を覚えた。
「神威は寂しくないの?」
が質問を返すと、全然、とすぐさま答えがあった。は無関心なまま、そう、と返す。
「俺たち独りぼっち同士だね」
にやにやと笑みを浮かべている神威に、は呆れたような笑みを返した。
end
相変わらず分かりにくいな、団長は!
団長はただ、が自分と同じような考えで、嬉しかっただけです。
さすが俺のオンナだね、ドヤァみたいな感じ。
なんかこの人達、他人を必要としない究極の個人主義みたいな気がして。
なんとなく一緒に居るけど、分かれる時が来たらスッパリ別れるし、それを当然の事として受け入れそう。
それに対して寂しいとかは感じない。
むしろそんな風に思うような奥底まで、誰にも気を許してないような感じ。
万が一、寂しいなんて感じてしまったら、
自分は弱くなったって団長はめちゃくちゃ嘆きそうですね。