鉄っぽいあの香りに硝煙の匂いなんて混ざってたら最悪。
たったそれだけで、凄惨な光景を再現できちゃうんだもん。
人間にとってそれは本能的に恐怖を呼び覚ます匂いなのかもしれないけど、国の身体に作用するそれはちょっと違う。
当然、恐怖がまず先んずる。国土に幾度も爆撃を受けた国ならなおさら。
そして、それ以上に興奮しちゃうんだ。これは戦いの匂いだから。生存本能みたいな何かを、呼び覚ましちゃう。好戦的になるのと同時に、すごくエロい気分になっちゃう。いつもなら優しく抱きしめてあげたい女の子も、今は引きずり倒してむちゃくちゃに犯してやりたい気分。そういうプログラムを脳の中に直接叩き込まれるようなそんな感覚。
ああ、酩酊に近いのかな?
血と硝煙の匂い……最高に飛んじゃうんだよねぇ。
027.敏感肌
俺の変化に気がついたのか、の身体が強張ったのに気づいた。逃げたりはしないけど、いつでも逃げられるように準備している感じ。勿論、逃したりなんかしないけど。
「イタリアさ……」
「黙って」
取り繕おうとしたの言葉を遮って、俺はを抱きしめていた腕に力を込めた。怪我した所を無理矢理に締め付けられて、が苦しそうに呻く。止血してなかった傷口から、血がちょっと吹き出したみたい。負傷した左肩から赤い血が伝って、指先からぽたりぽたりと零れる。
は痛みに目を見開いていたけれど、その口から痛いという言葉はこぼれ無かった。
その事に俺は気を良くし、指先でそっと傷口に触れた。
「っ!?」
「ねえ……痛い?」
問われるまでもないだろう。痛みから逃げるように一瞬身体が大きく跳ねた。勿論、俺の腕が拘束しているから逃げられるはずがないんだけど、の身体は痛みと緊張で震えているみたいだ。
「不思議だよね。どうして俺たちにも血が流れてるんだろ。俺達の身体って中身は土なはずでしょ? あ、の場合、海水の方が多いのかな?」
ならこの血は、塩辛いはずなのに ――――
「うっ、あ」
舌先をはわせると、やはりそれは鉄の味がした。
人間や、動物と同じ。でもきっとそれよりも、もっともっと甘い。そう感じるのはが国土を持つ国の一部だからだ。
国の生存本能ってなんだろう。動物なら子孫を残すことだよね。俺たちだってそれは同じ。自分たちの遺伝子を後世までずっと残していきたい。俺たちに子供はうめないけど、それでも誰かと性行為をしたくなっちゃうんだ。他人の土に自分の血肉を滴らせて、唾液も精液も大地に染み込ませたいと思う。
その行為が現個体としての俺たちじゃなくて、国家や、人にどんな作用があるのかはわからないけど、でもこんな風に国が狂って本能を求めるのは、きっと理由があっての事なんだ。
は俺のそんな言い訳めいた独白を黙って聞きながら、徐々に呼吸を荒くしていった。触れられるだけで生まれたわけじゃない熱に、頬を上気させて潤んだ瞳で俺を見上げている。
嗚呼、悪い子。
end
特に意味のない雰囲気小説。
ちょいアナザーっぽいですね。