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 僕が女の子好きなのはねぇ、女の子は嫉妬深いから――――



023.女たらし




 目を細めて、口を歪めて、獣が嗤う。
 女遊びを嗜めたに向かって、よりにもよってそんな事を言い放ったのだ。
「可笑しいよねぇ。貞操感のない僕じゃなくって、別の女の子を嫌うんだよ、女の子は。男だったらこうはいかないよね。寝取られたらきっと女の子を責めるより、相手の男を殴りに行くよ?」
 だけど女の子だとそうはならないんだよねェ――――
 可笑しくて仕方がないというように、腹を抱えて白い獣は嗤うのだ。
「別の子の残り香、髪の毛、爪痕。存在そのものより残したものが憎いんだよ」
 白澤の纏う香りに別の何かが混ざるだけで、その身体に別の女の爪痕が残るだけで、嫉妬の炎は業火となる。その炎は不貞を犯した白澤よりも、その身体に残された女の痕跡へと向かうのだ。
 怒りよりも妬み。殺意よりも怨嗟。
 その感情を見も知らぬ女に向けていると知るだけで、白澤は幸福なのだ。
 靡きもしない、好いている素振りさえ見せない上品なこの娘が、そこらの遊び女と変わらぬ恨みや嫉みに身を焦がす姿は、極上の美酒にも勝る酩酊感を白澤に齎す。
 だから、白澤は女の匂いを決して絶やさない。
 己の名が穢れようと、信頼が地に落ちようと、そんなものでは引き換えに出来ぬほどの幸福を白澤は得るからだ。
 もしかしたら、想い人を抱く事よりも、こうして嫉妬に狂う姿を眺めるほうがより強い恍惚感に浸れるのかもしれない――――そんな退廃的なことを思いながら、今日も他人を褥に誘う。
 白澤はくすくすと笑いながら、暗い瞳での怒りに満ちた顔を見やる。
「こんな事を続けてたら、いつか刺されるかもしれないね。ま、殺せるものなら殺してごらんよ……、待ってるから」




end


ゲスい白澤さん。