018.目論む
策す、謀る、仕組む、企てる ――――
おおよそ、そういった計画性かつ辛抱のいる行為と縁がない。欲しいものは力づくだし、欲望には忠実、我慢などする理由がないし、そもそも我慢というものを理解しない。
世間に対して唯我独尊状態である上、もともとあまり物欲が無かった。欲しい、という感覚がないのかそういう顔を普段しなかった。
だからこそ、彼のそんな行動は奇妙に映る。
「アンタ……そんな可愛げがまだあったんだねェ」
と、阿伏兎がにやにやといやらしい笑みを浮かべて神威を見やれば、神威は煩いなとばかりに無言で睨み返してきた。
それでも、そんな阿伏兎の言葉を聞き流すくらいに、彼は有頂天なのだ。ソファの横のくずかごには、市販のチョコレートの空箱が大量に捨てられている。量にして軽くキロを超えるのではないかと思うが、その中身が食べ尽くされる事なく部屋に備え付けられた冷蔵庫にしまわれている事を阿伏兎は知っている。
そして普段、カレンダーになど目もくれず、今日が何月何日であろうと気にもとめないような男が、これみよがしに卓上カレンダーをテーブルの上に載せている。それ以外の物 ――――
灰皿だとかティッシュペーパーだとか、阿伏兎の読みかけの雑誌だとかは邪魔だと言わんばかりに、向かいのソファの上にぶちまけられていた。
さて、今日は何の日でしょう?
そんな問いに絶対この男は答えないだろうし、もし阿伏兎が聞いたりしたら今度こそ半殺しの目にあうかもしれないが、こんな俺様ぶってる男でも一人前の可愛らしさがあったのかと阿伏兎は感心してしまったのだ。
普段何も欲しがらないくせに、たまのオネダリを口に出すのが恥ずかしいだなんて何ともお可愛らしい。
チョコレートなんて板のままバリバリ食らうような奴が、わざわざ箱を捨てて分かりやすく冷蔵庫にしまっているのだ。腹の音を盛大に鳴らしつつ、それでも冷蔵庫のそれに手をつけない。
神威は阿伏兎の方を見ないようにしながら仏頂面で寝転がっていたが、部屋のドアが開いた音を聞くとぴくりと肩を動かした。
にやにやと再び笑みを浮かべる阿伏兎を煩いなというように一瞥してから、
「、お腹すいたよ。……何か作って」
何かと言っても、冷蔵庫の中には甘いチョコレートしか入っていないのだけれど。
end
バレンタインデーネタ。
遠回しにチョコ欲しいですオネダリ。