008.禁句
「あ」
にっこりと微笑まれて後ずさる。
天地神明に賭けて故意ではない。
なんというか言葉のあや。売り言葉に買い言葉で、つい口走ってしまったのだ。
は花より団子だよね、だなんてからかわれたりしたから、
『半兵衛様みたいに子供じゃありませんから』
と。
「〜?」
笑顔が怖い。
と言うか、じりじりと寄ってくるその足取りも怖い。
「あ、あの、ごめんな……」
「なぁに? 俺べつに怒ってないよ? それともは、俺を怒らせるような酷い事をしたのかな〜」
「い、いえ、その」
「俺、最近更年期障害でちょーっと耳遠いからさぁ、おじさんにも分かるように言ってくれないと、若い子の言ってることよく分かんないんだよねぇ〜」
んん? っとにこにこと微笑みながら耳に手をあて顔を寄せる。
だが、官兵衛の鬼の手よりも邪悪な気配を迸らせる半兵衛に、まさかあの言葉を再び告げるわけにはいかない。かと言って素直に謝ったとしても、激昂の半兵衛が真面目に取り合ってくれるとは思えなかった。
と、がおろおろしていると、半兵衛はしょうがないなぁ、と呟きを一つ。
がしり、との手を掴み、
「じゃ、あっちでゆっくり話そっかぁ。にも、俺が君より何歳も年上で、大人の男だってこと、分からせてあげなきゃだしぃ」
「ひっ」
は顔を青ざめさせ、首をぶんぶん横に振った。
だが、より年上で大人な男・半兵衛は、そんな抵抗などいともせずの身体を座敷の方へと引きずっていく。
そして、パタンと襖の閉められたその中から、悲鳴とも嬌声とも付かない怪しい声が響いたとか何とか。
end
半兵衛流(性)教育的指導。