007.生まれて初めての
「だから!」
と、は顔を真っ赤にして声を荒げた。
いつもの美術室――――だが、いささか雰囲気がいつものそれと異なる。
夕陽を満たした放課後の教室には、槙島とが二人きり。だが、は椅子に座った槙島のネクタイを掴み上げて、睨みつけるように見下ろしている。
まるでかつあげ現場のようだが、そうではなく――――
「いいから目を閉じろ!」
断じて恐喝でもない。
「なぜ?」
と、こちらは真っ赤になったとは対照的に、冷静な眼差しの槙島。その表情はこの状況を楽しんでいるようですらある。
「なぜって、そりゃあ……そんな……目を開けたまま、出来るわけが……」
どんどんと消え入りそうになっていくの声に、槙島はにっこりと笑みを浮かべるて応じる。
「なんだい?」
確信犯の笑み。
それに気づいて、はますます顔を紅く、泣きそうな顔で槙島を睨んだ。そして、べちんと音がするほど強く、槙島の目をもう片方の手で覆い隠すと、
「光栄に思えよ! 初めてなんだからな!」
盛大な照れ隠しを口にしてから、ゆっくりと自分の唇を彼の唇に重ね合わせたのだった。
end
自分から求めるキス、という意味で。