004.例のごとく
半兵衛の鋭い視線は、まっすぐに官兵衛を見据えていた。
「俺、退屈は人間を殺すと思うんだ」
ほう、と応じる官兵衛。半兵衛は真面目な顔のまま、その先を続ける。
「どんな賢人であっても、同じ毎日、決まった出来事、先の見えてる展開を続ければ、勘って鈍るものだと思うんだ。だから俺は、常に人の意表を付く事を考えてるんだよね」
「……軍師ならば当然だ」
同意を示した官兵衛に、うんうんと半兵衛はうなずく。
「つまり俺たち軍師は、人の虚を付くのが仕事なの。同じ策を使えばすぐさま見抜かれちゃう。決して相手が気づかない、慢心の裏をかく事を心に留め置かなくちゃいけないんだ」
ふむ、と官兵衛は腕を組み、いつになく真剣な眼差しの半兵衛を見下ろした。
半兵衛はぴんと人差し指を立て、そこでだよ、と話を切り替える。
「俺や官兵衛くらいになれば、そんな事は当たり前かもしれない。けど、まだ戦経験の浅い若い子たちはこの重要性をわかってないよね? だから軍師であり人生の先輩でもある俺は、身をもってそれを教えようとしたんだよ」
「……そうか」
うんうん、と一人頷く半兵衛を見据え、官兵衛はそれだけを返した。
それ以外の言葉はない。
沈黙に耐えかね、半兵衛は再び人差し指を立てると、
「だ、だからね、俺もべつに好きでこんな事したわけじゃないんだよ? だけどの事を思うなら……」
「空中から羅針盤を手に風呂を覗くのか?」
ここぞと言うところで、官兵衛の重厚な声が半兵衛をさえぎる。
半兵衛はうっと口ごもると、辺りに視線を泳がせた。
逃げ場も、助けもない。
沈黙が場を支配する中、最初に動いたのは官兵衛だった。
緩慢な動き、ただ手を視線の位置まで上げたその動き一つで、
「愚か者よ、滅せ」
頭上から落下してきた巨大な鬼の手が、半兵衛を叩きのめしたのだった。
end
例のごとく(おかんべえの鉄拳制裁)。
うちの両兵衛のデフォですね。