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!CAUTION!
このシリーズには、狂愛、エロ、グロ、暴力的な表現が含まれます。
神威が病んでます。ヒロインが狂ってます。救いはありません。
ダルマ、四肢切断という言葉に嫌悪感を催される方は、閲覧をご遠慮ください。
あと今回は内容が下品です。
問題のない方のみどうぞ。








































ハコナシ03





 朝八時から夜の十七時まで。私の仕事は時間通り、一分の狂いもなく続く。
 七時五十分頃に自室を出て、阿伏兎より渡されたカードキーで管理室までの扉を開いていく。
 初めは海賊達と生活を共にする事に恐怖を感じていたが、それは私の杞憂に終わった。
 皆、私の冗談のような薄っぺらいスーツを見ると――――こんな格好などしていたくなかったが、まさか戦艦に乗せられると思わなかった私にはこれしか外着がないのだ――――にやにやといやらしい笑みを浮かべて寄ってくるのだが、私の首からぶらさがったプレートを見ると皆脅えながら去っていくのだ。
 上長である阿伏兎に言わせれば、何があっても喧嘩を売られない免罪符のようなものらしい。
 このプレートをつけた人間と接触した場合、団長――――阿伏兎の上司だ。私はまだ会った事はない――――に粛清される定めにあるらしい。粛清という言葉を私は初め比喩か何かと受け取っていたが、どうやら団員たちの態度を見るに、それは冗談でも何でもないようだった。
 だから、誰も私に関わらない。
 皆、私を避けて通る。
 誰も話しかけない。
 私は独りだ。
 だが――――
「ねえ、仕事は慣れた?」
 突然に声をかけられ、私は彼が私を見ているにも関わらず自分に声をかけられたという事を理解するのに、しばらくかかった。
「え……あ……」
 他言すれば命はない。死の誓約を思い出し、私は口を半開きにしたまま言葉を続けられずにいた。
 すると、目の前の青年はケラケラと可笑しそうに笑い、
「大丈夫だよ。俺とは口をきいていいんだって。ここじゃ俺が一番偉いんだから」
「は……?」
 青年の言葉の意味を理解せず、私が間抜け面を晒していると、彼はもどかしそうにああ、もうと呟いて、私の前で網膜認証を行って見せた。
「えっ、あの、もしかして、あなたが……団長?」
「そ、俺が神威。これからもちょくちょくここに来るから、よろしく頼むよ」
 そう笑って、神威は管理室の中へ入っていく。自分も入っていいものか判断に困ったが、神威が何しているの? とでも言うように私の方を振り返ったので、私は恐る恐る彼の後に続いた。
 少女は眠っていた。
 ガラス窓のこちら側からでも、彼女の安らかな寝息が聞こえて来そうな穏やかな顔だ。
「あちゃ。まだ寝てるみたいだね。起こしちゃ可哀想かな?」
 神威は同意を求めるように私の顔を見たが、次の瞬間には私のデスクの椅子に我が物顔で座っていた。
 調子が掴めない……
 明朗そうな青年の顔と、阿伏兎から聞かされていた恐ろしい人物像を等号で結べなかった。
 ねぇ、君はさぁ、と神威は空の引き出しを開いたり閉じたりしながら、いまだ戸惑っている私に声をかけた。
を見てやらしい気持ちになったりしないの?」
「は……」
「あの娘のこと。全裸だし」
「え、いえ、滅相もありませんっ!」
 咄嗟に阿伏兎との約束事を思い出し、私は首を横に振った。
 という名である事を初めて知った。
 確かに初めて出会った時、禁忌を垣間見たような恐ろしさと美しさを感じたのは事実だ。
 だが、それは美しい蝶の標本を見た時の感情に近い。
 それに対して何か個人的な――――性欲など感じようがなかった。
 私にとって彼女は標本の蝶だ。美しいと思うが、それとどうこうなろうとは思わない。そもそもあれは別の種族である以前に、まったく別の生き物だ。
 このガラス窓の先に足を踏み込み、標本の蝶とどうにかなると言うのは、種を超える背徳的な交わりのように思えた。
 私の答えを聞いて、神威は可笑しそうにケラケラと笑った。
「あはは、即答するなんて阿伏兎が何か言ったのかな? に欲情なんてしたら、怖い団長がブチギレるとか」
「いえ、その……」
 まあ、似た様な事を言われた。
 欲情というか凝視しただけで嫉妬して、臓物を引きずり出されると、だいぶ誇張した表現だったが。
「まあ、どっちでもいいや。それより阿伏兎はのこと、お前になんて言ったの?」
「え……いえ」
 実は彼女について説明など受けていない。
 私はただ、毎日決められた時間にここに座り、ひたすらモニターの数値を監視しろと言われただけだ。むしろ、興味を持ってはいけないと言われている。
 見るな。触れるな。聞くな。考えるな。疑問など、もってのほかだ、と。
 それを伝えると神威は再びケラケラと笑った。
「なぁんだ、教えてあげないんだ。それじゃあ、余計に興味持っちゃうよね?」
「いえ……」
「教えてあげようか。なんであの娘に、両手足がないのか」
 まるで悪魔の囁きのように甘い声で、神威が目を細め私を凝視する。
 私は恐怖を覚え、そして阿伏兎の忠告が決して比喩や誇張表現などではないことを直感的に理解した。
 この男だ。この男が、きっと殺したのだ。
 私の前任者を、その前の管理人を。その更に前の管理人を。
 殺された理由は、いまさら問うまでもない――――
 きっと、この男は、どうしようもなく凶暴で、嫉妬深く、欲望に満ちていて、そして……狂っている。
「俺が折ったんだよ。骨を砕いて、神経ごともぎ取って。ノコギリで切断面をキレイに斬ってあげたんだ」
「……」
 悪魔が嗤う。これ以上ないほど邪悪に。
「だって俺から逃げるような手足は、要らないじゃないか」




end


さてさてヤンデレ本領発揮。