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!CAUTION!
このシリーズには、狂愛、エロ、グロ、暴力的な表現が含まれます。
神威が病んでます。ヒロインが狂ってます。救いはありません。
ダルマ、四肢切断という言葉に嫌悪感を催される方は、閲覧をご遠慮ください。
問題のない方のみどうぞ。








































 私がそれと出会ったのは、一月前くらいの事だろうか。
 ちょうど前の仕事に嫌気が差していた私は、転職サイトで偶然見つけた募集に条件が良いという理由だけで飛びついた。
 拘束時間は長いが、破格の給与。管理人という募集要綱から察するに、賃貸物件か何かの管理なのだろうと思っていた。愚かな事に選考に受かり、それに出会うまで、私はずっとそんな勘違いをし続けていたのだ。
 今思えば、なぜ不思議に思わなかったのだろう。
 たかだかマンションだかアパートだかの管理に、こんな高額な給与が与えられるはずなどないのに。選考らしい選考もなく、一度だけ行われた面接で口は固いかどうか、尋ねられたことの意味を。
 そして、家族構成。両親は他界しており、兄弟もなく、独身で、恋人もいない、交友関係もそう広くはない私の素性を、なぜ彼らが興味深そうに聞いたのか――――なぜ、私は疑問に思わなかったのだろう。
 今、考えればすべて納得がいくのだ。
 口が固いか聞いたのは、それの事を口外する危険を確かめるため。
 家族構成や交友関係を尋ねたのは、万が一私が居なくなった時の影響範囲を知るため。
 そして、破格の待遇はそれらに対する報酬なのだ。
 もし過去に戻れるのなら、どんな手を使っても私は私を止めたい。私はそれに出会ってはいけなかった。どんなに貧乏であろうと、どんなにこの世に嫌気がさしていようと、私は明るい太陽の下を歩いていたかったのだ。
 私のような凡人はその道から反れてはいけない。
 陽の当たらぬ場所にいるのは――――想像も及ばぬ獣ばかりなのだ。




ソコナシ





 私の上長という男に連れていかれた部屋は、戦艦の中でかなり最深部に近い場所に位置していた。把握しているだけでも厳重に施錠された三つの扉を越え、極めつけは網膜認証による解錠。
 阿伏兎と名乗った男の説明に寄れば、船内でもこの場所のことを知る人間はわずからしい。
「後でお前さんの目玉のデータも追加しておかなきゃなぁ」
 と、のんびりした口調で言うが、私は驚きの連続でまともに応答など出来なかった。
 そもそも――――就職先が宇宙海賊・春雨の師団だなどと聞いていない。
 上司が傭兵種族の夜兎だなんて聞いていない。
 私の勤務先が戦艦の中など当然の如く知らなかったし、一緒に銀河を漂うはめになるなど思いも寄らなかった。
 荒くれ者が集う戦艦の中を、薄っぺらいスーツで頼りなさに歩く私は、なんと間抜けな姿に見えただろう。きっと目の前を歩く無骨な夜兎族の男がいなければ、私など一瞬で塵にされてしまっていたに違いない。
「こっから先がお前さんの職場だ。が、入る前に重要な事を話しておく。こいつを破るとお前は死ぬ、いいな?」
 これ以上私はいくつ死の誓約を受けねばならないのだろう。私は強張った顔で阿伏兎に向けて頷いた。
「この先にいるモノについて他言無用だ」
「はい」
「お前は決められた仕事だけをすればいい。それ以外はするな」
「はい」
「干渉するな。極力見るな。触れるな。守れるか?」
「はぁ」
「それとお前……アッチの方はノーマルか?」
「はぁ……え、あ、は?」
「ロリコンだったり、SM好きだったり、制服に欲情したり……いや、こういう普通のじゃねェな。とにかく変態的な性癖はねェかって聞いてんだよ」
「いや……普通、だと思いますけど……」
 不躾な質問にあっけに取られて、私は言葉に詰まりながらも素直に答えた。
 阿伏兎はそうか、とだけ呟き、一人納得したような顔をすると禁断の扉とでも呼ぶべき最後の扉に手をかけた。
 背を向けたまま、
「いいな? お前で五人目なんだ。簡単に死んでくれるなよ?」
 そう釘を刺して、ゆっくりと扉を開いた。
 そこは――――私の想像に反して、ごく普通の部屋に見えた。何かの実験室か手術室のように見えるが、少なくとも四枚もの扉で外部と隔離するほどの場所には見えなかった。
 ケーブルの繋がったモニターのようなものと、その先にガラス窓が見える。
 阿伏兎はゆっくりと中へ進むと、私に向かってモニターや機器の説明をした。
 この数値を超えたらどのボタンを押す、このメーターが振り切れたらどういう対応をする。複雑そうに見えた機械も、私が注意しなければならないのは数箇所だけだった。
 これを決められた時間中、ずっと注意して監視すればいいらしい。これが“管理人”の仕事だ。
「これは何の数値なのですか?」
 何気なく疑問を口にすると、阿伏兎が殺気を露わにし睨み付けてきた。
「や、いやっ……」
「まあいい。ガラスん中を覗いてみろ」
 そう言って、阿伏兎は巨大なガラス窓の方を顎でしゃくって見せた。
 私は恐る恐る、変な質問をしてしまったことを後悔しながら、モニターの前に立った。そっと覗き込むように、ガラス窓の奥に視線を向ける。
 そして――――私はそれに出会った。
 透明な水晶のような結晶型のケースが、病院のベッドのような真っ白で簡素な台の上に載せられていた。太く色とりどりのケーブルが何本も延びて、結晶体の中に良く分からないものを行き来させている。
 そして透明な水晶の中には、まるで死体のように白い身体が収納されていた。
 そう。それは“収納”と呼ぶに相応しい。
 手も足も持たないそれは、そういう形のオブジェクトのように見えた。水晶の中に納まった全裸の少女というそういう置物なのだと。
 だが――――
「ひっ」
 ガラス窓のこちらから覗き込む私を、それの紅い瞳があちらから水晶の外の世界を覗き込むように――――私を見たのだ。
 私は恐怖と驚愕と混乱でごちゃまぜになった顔を阿伏兎に向けた。
「え……あ、……あれは、生物、なのですか……?」
 私の問いかけに阿伏兎は答えなかった。だが、否定しない事こそが彼の答えなのだと私は理解した。
 再び視線を戻すと、少女はもう私を見ていなかった。
『……りす、すいか、からす、すいせい、いぐあな、なきうさぎ……』
 虚空をぼんやりと見つめながら、一人しりとりに興じている。
 理性があるのかないのか――――否、人としての知性というものがあるのかないのか、私には判断がつかなかったが、私は直感的に少女の意識は彼岸の先にあるのだと思った。
『……つき、ききょう、うさぎ、ぎんいろ、ろうごく、くらやみ、みなごろし、したい……』
 狂っている。
 滔々と紡がれるその言葉は、まるであの世からの言葉のようで。
 この生きているのか死んでいるのか分からない物体が、私は恐ろしく、同時に美しいと感じてしまった。
 それはきっと生物として、抱いてはいけない、冒涜的な感情なのだと思う。




end


裏に置くべきか悩みましたが、注意文入りで表に置く事にしました。
とある鬼畜シューティングを見てたら、
書きたくなってしまった。