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両手に花04





「うわああああああ! って……、あ?」
 己の絶叫で目が覚めた。
 わけが分からぬまま、自室の天井をぼんやりと見つめる。
 そして、視線を隣りに移す――――と、そこには爆睡しながらも、がっちりと阿伏兎の腕を掴み関節技をかける神威の姿があった。
 なんだこれは……
 視線を己の上半身に向けると、眠りこけた神威に引っ張られたせいか、寝巻きの右半分がまるまる破れかけている。
 夢の中で聞いた不穏な音はこれだったのかと安堵の吐息を一つ。汗でびっしょり濡れた己の額を手の甲で拭い上げた。
 よくよく考えれば、当たり前ではないか。
 神威に腕を引っ張られつつ、冷静に考えると何故だか笑けてきた。
 自分は誰よりも近い場所で、この壮絶にはた迷惑なバカップルの事を見続けて来たではないか。が神威を差し置いて、阿伏兎に惚れる事などありえない。百歩譲ったとしても神威がそれを許すはずがない。そして千歩譲っても、神威が以外の人間を――――そう、男だとか女だとか関係なく、愛するはずがないのだ。
 当たり前じゃぁないか。
 くっくっと喉を震わせるように笑い声を上げる。
 安心したら、途端に腹が減ってきた。
「おい、団長起きろよ。なんでアンタ、こんな所で寝てんだ」
 大方酔いつぶれて、自室まで帰るのが面倒で寝入ってしまったのだろうが、腕を掴まれたままでは身動きさえとれない。
 起きろ、とぺしぺしと頬を叩くと、神威は安らかな寝顔をわずかにしかめさせ、ううんと唸った。
 そして――――がばり。
「は?」
 何故かマウントポジションを取られる。
 華奢な神威に上に乗られて、体格で勝る阿伏兎が身動き取れないと言うのは、なんとも奇妙な話だが、これが歴然たる力の差である。
 寝ぼけているとはいえ宇宙最強の名は伊達ではなく、渾身の力を込めても神威は阿伏兎の上から離れなかった。
「おい、団長。寝ぼけてんのか……?」
 声をかけるが、阿伏兎への答えはない。
「ん……、〜。ちゅー……」
 しかも、どんな夢を見ているのか、幸せそうな笑みを浮かべながら、阿伏兎の首をがっちりと掴み、突き出した唇を寄せて来る。
「おい……おいおい、もう夢オチじゃ済まねーんだぞ……? 何がちゅーだっ! おいっ、起きろ!!」
 阿伏兎は抗った。
 まるで暴漢に襲われるいたいけな少女のように暴れた。いやぁ、やめて、犯されるー! そんな事を大音声で叫び続けた。
 だが、神威の圧倒的な力の前では、それは無駄な抵抗にしかならず――――
「阿伏兎っ、どうしたの!?」
 阿伏兎の悲鳴に驚いて部屋に飛び込んで来たの前には……
「んん〜、〜」
「んぐ……うわっ……むう……!」
 半裸のままベッドの上で絡み合う男たち。うち一人は同僚で、もう一人は恋人である。
 頭痛も眩暈も通り越して、は卒倒しそうなほどの衝撃を受けた。
 それを寸でで堪え、虚勢で貼り付けた笑顔を二人に向ける。
「ねえ……何してるの?」
 にこり、と。それはそれは、美しい笑みを浮かべて問う。
 だが、その右手にはすらりと腰から抜いた日本刀。もう一方には、チャイナドレスの裾の下に隠したサブマシンガンを手にした。
 切っ先と銃口を二人に向け、問う。
「こんな朝っぱらから……男二人で何をしてるのかな?」
 何と問われれば、ナニとしか答えようがない。
「お、落ち着け! これは不可抗力だ! 俺は被害者だーーー!」
 寝ぼけたまま熱烈なベーゼを求める神威を押しのけ、阿伏兎は己の身の潔白を叫んだ。
 だが、この状況。己の寝巻きは神威のせいで半分剥がれ、剥き出しの上半身の上に重なった神威が現にの目の前で濃厚な口付けをお見舞いしていたわけである。
「問答無用……。死ねっ!」
 の両手から繰り広げられる剣撃と砲煙弾雨を受けながら、阿伏兎は再び夢であることをひたすらに願ったのだった。




end


大変ありきたりですが、夢オチでした。
これにて「両手に花」シリーズ完結です。
ここまでお付き合いくださり、ありがとうございました!