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空想略奪愛・妄





「とりあえず、顔に蹴りを叩き込んで引きずり倒す」
「え?」
「それから間髪いれずに踏み潰す」
「は?」
「原型を留めないくらい粉々に叩き潰して肉ダルマになったら、今度はの番かな。俺の部屋に連れ帰って、自分が誰のモノか分からせてやろうか」
「もしも〜し?」
 の存在を完璧に無視して語る神威は、顔こそ笑顔だが端々から冷たい殺気が滲み出ていた。
 だからもしもの話でしょうよ、と神威の対極に座る阿伏兎が、呆れた様な顔をする。
「分かってるよ。だから俺も、もしもの話」
「もしもの話のわりにゃ、描写が細かくねェか?」
「想像力の問題だよ。俺は割と自然に阿伏兎が肉ダルマになった姿を想像できるよ?」
「……残念ながら、俺もアンタがそうする姿が想像できちまった」
 二人でうんうんと頷く姿――――片方は笑顔で、片方は苦渋に満ちた表情ではあるが――――どうやら二人の間で話は伝わっているらしい。
 ねえ何の話? と、が尋ねたが、二人はもしもの話としか答えなかった。
 自分の名が出て来たからそれなりに気になるのだが、二人からの説明はそれ以上ない。が怪訝な表情を浮かべている間にも、二人は二人にだけ通じる言葉で会話を進めてしまう。
「じゃあ、無理やりは無くして自然消滅ならどうだ? アンタと別れた後に、俺といい感じになるかもしれねェだろ?」
 挑発するような目で問いかけると、神威は話にならないねとかぶりを振った。
「前提があり得ない」
「あり得なくはねェだろ。愛想尽かされちまう可能性だって、あるじゃねェか。食費がバカにならねェとか、ロクに働かねェとか。それに比べりゃ、俺は常識的だし仕事もそこそこ出来る。ガキが出来たら、週一で家族サービスしてやったっていいぜ?」
 家庭的なお父さんをしたり顔でアピールしてみせたが、神威は笑顔のままきっぱりとそれを否定した。
「ないね」
 一体、何を根拠にそこまで断言できるのか。
 もしもの話でしょーが、と呆れた顔で告げると、神威はそれでも頑なに首を横に振って見せた。
「だって、物理的に有り得ないし」
「あ?」
「首だけになった男が、どうやって家族サービスできるの?」
 それは、つまり――――に近づいた時点で、俺は首を落とされるっていう脅しか。
 相変わらずの規格外の嫉妬に、阿伏兎はやれやれとため息をついてソファに身体を沈めた。
 例え話にもなりゃしない。
 不思議そうな顔をしているを、阿伏兎はちらりと見やると同情の眼差しを送る。
「アンタ……厄介なのに好かれたなァ」
「ま、天災だと思って諦めなよ」
 そんな言葉で片付けようとする神威は、少なくとも自分の行動が天災並みに不条理である事を自覚しているのか。
 神威は上機嫌に笑うと、まるで猫の仔でも呼ぶようにおいでおいで、とを手招いた。




end


対阿伏兎さんの神威の反撃の話。
相変わらず容赦なんてありません。