肉食男子・エクストラ
「…………」
甘い吐息と共に耳元に絡むそれに、胸の奥がずくりと熱くなる。
乱暴で粗暴で強引で我侭で、なのに抱くときだけ妙に優しいから――――その優しさに調子が狂う。
戦っている時は容赦なく手刀を叩き込むくせに、触れる指先は優しく肌の上を微かに撫でるほどに軽い。
噛み付くようなキスをして、問答無用でねじ伏せるくせに、今は体重をかけないように気をつけながら身体を重ねて、羽がなぞるように柔らかな口付けを繰り返す。
「……好きだよ、……」
艶を帯びた掠れた声が、鼓膜の奥で響いて、脳を蕩かす。
やめてよ――――
名前、呼ばないで。
「……、……」
名を呼ばれるたびに、この現実感のない状況をいやがおうにも自覚して――――少しだけ怖くなる。
『もう離さないよ……は、俺のモノなんだから、側にずっと居ればいいんだ』
どこまでも自己中心的でこっちの気持ちなんてまるきり無視。人のことを乱暴に扱っても壊れない玩具か何かだとでも思ってるんじゃないか――――そう思うこともしばしば。
なのに、
「……」
こういう時だけ優しくするから――――この男はズルイ。
うまく懐柔されるのが悔しくて、自分からは決して名前を呼ばない。好きとも言わない。
なのに、言葉にしなくてもそんな事はお見通しだとばかりに、嬉しそうな顔で囁くから。
「……好きだよ」
ああ、もう――――
やめてよ……自制がきかなくなる。
end
「肉食男子」その後の小噺。
ギャップとかあったらドキリとしてしまう。