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!CAUTION!
夜兎族についての捏造いっぱいです。
直接的なエロスはありませんが、内容が性に関するものです。
問題ない方のみお進みください。







































 とある生物学者のレポートより――――

 夜兎族の闘争本能は種の繁栄と逆行する、言わば滅びの遺伝子である。彼らの本能は他種族だけでなく同種族にも向けられ、共食いによる絶滅が危惧されるほどの被害を受けている。
 にも関わらず、彼らを戦場へ駆り立てるものとは何だろうか。
 押さえがたい闘争本能。それこそが夜兎族の謎を解明する答えであろう。
 興味深い例として、とある娯楽雑誌が夜兎族に対して行った、『誰を一番ぶっ飛ばしたい?』と題したアンケートがある。
 これは夜兎族が誰に対して闘争本能を向けるかを探る、意識調査の一種である。
 アンケートの結果、親兄弟配偶者などの近親者と答えた回答者が全体の六割に達した。
 同時に『誰を一番抱きしめたい?』と題したアンケートでは、先の回答を上回る七割が近親者と答えている。
 そして全どちらのアンケートにも近親者と答えた回答者のうち、うち七十%が女性だったと言う。
 これは夜兎族にとって愛情と闘争心はとても近い感覚にあるとする、一つの例である。
 勿論、科学的な証明は為されていないが、もしこの説が正しいのなら、雌は性フェロモンによる愛情と、それを阻害する闘争本能の間で雄を捉えて居る事になる。
 逆説的に考えれば、闘争本能を掻き立てられる異性を最も魅力的に感じると言う事だろう。つまり、愛情→闘争→愛情という具合に、彼女たちの愛情を阻害する闘争本能を乗り越え、気概を示した雄のみ彼女達は配偶者として認めるのである。
 そう考えれば、闘争本能は単なる滅びの遺伝子ではなく、ハードルの高い愛の試練となり得るが――――これは大変に気難しい。
 多くの雄が雌の素っ気無い態度に破れ、欲望のままに性犯罪に走る原因もここにあるのではないだろうか。
 強い雌であるほど強いフェロモンで雄を誘引し、より過酷な試練を与えると言うならば、種はその遠回りなメカニズムによって最強のカップリングを生み出そうとしているようにも思える。
 種の中で淘汰を続ける夜兎族は、どこまで“最強”を目指すのか――――その謎を解く鍵もまた、彼らの闘争本能の中にあるのだろう。
 



正しい兎の保健体育04





「殺られるのと、犯られるの、どっちがいい?」
 どちらも発音の上では同じ事ではないか――――と言う反論さえも許さぬほどに、絶対的な支配者の顔で彼は宣まったのだった。
 返答が許されるならどちらも嫌です、と返したいところだが、この質問に意味などない。
 彼が求めているのは回答などではない。純粋な供物として捧げられる己の身体のみだ。
 あの後、すぐさま小型船に乗り込んだだったが、阿伏兎の裏切り――――と言うか、阿伏兎には口を割る以外に生きる道はなかったのだが――――に遭い、戦艦を離れる前に神威の追撃を受けたのだった。
 発射場に現れた神威をそのまま焼き殺す勢いで動力を入れただったが、発射口が火を吹くよりも神威の反応は早かった。まずエンジンを軽々とぶち抜くと共に、力任せに片翼をもぎ取った。
 これでもはや宇宙空間に逃げる事は叶わない。どんな場所に逃げても追い詰める自信はあったが、猟場は狭いにこした事はない。それに――――いくらこの酩酊感が心地よいものであったとしても、ずっとお預けではどうにかなってしまう。
「さあ、出ておいで」
 神威はにこにこと微笑みながら、コックピットの外壁を力任せにこじ開けると、愛しい恋人を手に入れるべく手を伸ばした。
 ――――が。
 飛び出したのは、の白い指先などではなく、鋭利な切っ先。瞬時にかわしはしたが、それは神威の頬を掠めて紅い雫を宙に跳ねさせた。
 己の血に気を取られた瞬間、至近距離から銃弾の雨が叩き込まれた。神威はちっと舌打ちすると、バク転で銃弾をかわしつつ後退する。
「死ぃぃぃぃねぇぇぇぇぇぇ!!」
 恋人の呼びかけにしては、あまりにも血生臭く殺意に満ち満ちた雄叫びを上げながら、はサブマシンガンの弾を盛大に放った。
 射程距離ぎりぎりの所まで下がりながらも、神威はようやく見つけた恋人の姿に嬉しそうに笑みを浮かべる。
「あっはは。、いつにも増して殺る気だね」
「貞操の危機なんだから当然でしょ!? お願い、いつもの神威に戻って!」
 そう言いながら砲煙弾雨をぶっ放つの姿は、とても懇願しているようには見えない。完全に殺る気満々である。
 だが、の本気を感じ取って、神威も益々気持ちを高揚とさせる。
 血の伝う頬を手の甲で擦り上げ、ぺろり、と舌先を這わせると、
「さあ、保健体育の時間の始まりだ」
 欲に濡れた目を細めてを見据えたのだった。





「なんだかなぁ……」
 かりかりと鼻の頭を指先で掻きながら、阿伏兎は上司とその恋人の顔を順に見やった。
 件の騒動から三日後の事である。
 その日、神威は物凄い上機嫌な顔――――しかも、どことなくツヤツヤして見えるが深くは聞くまい――――で団長室に現れた。ごくろーさん、と普段決して口にしないような労いの言葉を阿伏兎にかけ、鼻唄交じりに自分のデスクに付いた。
 彼の不在中に神威の執務を阿伏兎が肩代わりした事など意識もしていないだろうが、とにかく自分の幸せを誰かに分けてやりたいとでも言う様な――――端から見れば、何とも腹立たしい顔をしていた。
 一方、次に現れたは、それこそ世界中の不幸を背負ったような鬱々とした顔をしていた。話しかけても心あらずと言うか、何か大切なものを奪われてしまったように――――何を奪われたかは問うまい――――真っ白になって呆けていた。
 この対照的な二人を見れば、何が起こったかなど一目瞭然である。
 何はともあれ美味しく恋人をいただいた事で、阿伏兎の謀反はチャラになったらしい。その事に胸を撫で下ろしていると、ふいに神威が予定の一切書かれていない卓上カレンダーを手に取った。
 上機嫌に鼻唄を奏でながら、赤ペンで何やら印をつけている。
 ガラにもなくハートマークなぞをカレンダーに書き込むと、
「次の発情期が楽しみだね」
 と、そんなとんでもない事を上機嫌で言い放ったのだった。





 とある生物学者のレポートより――――

 最後になるが、興味深いデータを一つ挙げておこうと思う。近年の夜兎の夫婦の離婚率に関するデータである。
 こう言った特殊な生態を持つため、半ば一方的に恋愛関係および婚姻関係を結ぶ事の多い夜兎族だが、実は彼らの離婚率は地球人のそれより遥かに低い。
 闘うより働いて欲しい、喧嘩バカを直して欲しい、と妻達の夫への不満は多いようだが、それでも離婚に至らないのは闘争本能を超えたプロポーズに彼女達も愛情を感じているためではないだろうか。
 自覚のない発情期から雄を振り回し続けた彼女たちだが、最後に種族全体の盛大な惚気を見せた所でこのレポートを閉めたいと思う。




end


なんだかやっつけ感溢れる終わり方ですが、
これにて「正しい兎の保健体育」シリーズ完結です。
ここまでお付き合いくださり、ありがとうございました!