夜兎族についての捏造いっぱいです。
直接的なエロスはありませんが、内容が性に関するものです。
問題ない方のみお進みください。
とある生物学者のレポートより――――
食恋族と言う相手を喰らってしまう種類の天人がいる。これと夜兎族を同等に語るのはいささか無理があるが、発情期における雌の不利益についてのみ、同じだけの理不尽さがあるのではないかと思う。
これは実際に行われた研究によるが、夜兎族の雌の大半が発情期に発散される性フェロモンに対し無自覚である事が分かっている。性フェロモンの誘引を強く感じる雄に対し、雌は自覚症状に乏しく、かつては発情期という概念すら持たなかった(現在は学校教育等で認知度を高める活動が、教育機関により行われている)
そのため、当然の事ながら雄と雌でメンタル面の齟齬が現れる。
雄にしてみれば雌の性フェロモンに感化され、多くの雄を討ち倒せば、雌を手に入れられるという認識でいるわけだが、一方雌はと言うと自分の撒いたフェロモンにも無自覚であるため、雄の行為に戸惑う事になる。
いつも通り暮らしていた所、突然知らない男達に求婚された、恋愛感情のない男に告白された、無理やり襲われそうになった――――そういった一方的なアプローチを受ける羽目になるのだ。
うまくカップリングが成立すれば問題ないが、大半はうまくいかず雌の反撃に合うか警察のお世話になる。数多くの闘争を勝ち抜いた雄にしてみれば、報われない結末である。(この不幸な結末を減らすため、最近では雌をその気にさせる薬や、雌のフェロモンを抑制する薬が開発されている。しかし、完全な予防には至っておたず、現在も発情期における性犯罪の増加が問題とされている)
正しい兎の保健体育03
荒れ果てた部屋の惨状を目にして、その笑みに翳りが浮かんだのを阿伏兎は決して見逃さなかった。
コツ、コツと、くつの踵を鳴らして部屋の中央まで行くと、ぐるりと視線を巡らせる。が居ない事など扉を開いて早々に気づいているだろうに、と考え――――違う。これはここで何があったのかを、正確に把握しようとしているのだと悟り、背筋が凍った。
最後に神威の視線は阿伏兎に止まり、真新しい銃創と刀傷を確かめて目を細めた。
「その粗末なモンおっ勃ててに飛び掛ったの? 殺すよ?」
言葉に容赦がない。きっとこれから与えられる粛清には、もっと救いがない。
粗末だなんてどうして知ってんだ――――そんな軽口を叩き掛けて、粗挽きウィンナーにしちゃうぞ、と遮られた。
あ、俺、虚勢されるかも。
チーンと、仏壇の鐘のような音が脳裏で響き、阿伏兎は男としての人生の終わりを悟った。
が、発情期に振り回されているのは神威も同じらしく、阿伏兎の雄を再起不能にするより、女の尻を追い回す事を優先したらしい。
「それはそうとはどこ?」
床に胡坐をかいた阿伏兎と視線を合わせるように、神威は中腰になって笑顔を向けた。
を逃がしたのは、本能に負けて襲った罪滅ぼしと、神威に追われる事への同情の表れである。簡単に口を割るつもりはない。どうせ俺はコイツに半殺しにされるんだ。
そう考え、阿伏兎は首を横に振った。
「さあな。きっとアンタに愛想付かせて、」
「粗挽きウィンナー」
「小型船で逃げました、団長!」
振りかぶった神威の拳を恐れ、阿伏兎は早々にを売った。
スマン。俺、駄目だった……。だって団長、超怖ェんだもん。
胸の中で合掌。
神威はそれだけを聞くと、もはや阿伏兎に用はないと言わんばかりに、くるりと踵を返した。
が逃げたと知っても尚、その足取りが早まる事はなかった。鼻唄を口ずさむような余裕と上機嫌。
何が彼をそこまでさせているのだろうと阿伏兎が訝った瞬間、
「ねえ、今さぁ。すごく楽しくて仕方がないんだ」
まるで胸中を読んだかのように、神威が背を向けたまま答えた。
「わかる? 心臓が張り裂けそうなくらいドキドキしてる。嬉しくって楽しくってアタマがどーにかなっちゃいそう」
それは――――きっとのフェロモンのせいだ。
ここがあたりを宇宙に囲まれた密閉された空間である上に、彼はこのテリトリーのボスなのである。濃厚なの魅了を受けた上に、それを躊躇する要因はない。
ここでは彼の自由に振舞っていい。この狩猟場で邪魔するものは存在しない。
焦がれて、焦がれて、焦がれて――――触れる瞬間を夢想し、捕まえる方法をシミュレートするだけで、こんなにも心躍るのだ。
「これって恋かなぁ?」
そんな事を極上の笑顔で呟いた神威に、ぜってー違ェと阿伏兎は胸中で返してやった。
end
やっぱり団長が怖い阿伏兎。
にしても、味方を売るのが早すぎる(笑)
ま、ギャグですから。