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!CAUTION!
夜兎族についての捏造いっぱいです。
直接的なエロスはありませんが、内容が性に関するものです。
問題ない方のみお進みください。







































 とある生物学者のレポートより――――

 夜兎族は多くの動物がそうであるように、年に数度の発情期を迎える。
 もちろん他のヒト型の天人と同じように、彼らは一年中性交・繁殖が可能であるが、本能的にこれを誘発する時期が存在する。
 この時、雌は強い性フェロモンを発し雄を誘引する。低濃度でありながらその効果は実に数キロに渡って発揮される強力なものだ。
 個体差も見られるが、この範囲は固体の戦闘能力に比例するとすでに研究により証明されている。実に夜兎族らしい特徴であるが、弊害も存在する。
 先に述べたとおり雌雄の比率がアンバランスでありながら、一人の雌の発するフェロモンが広範囲にわたり散布されるため、一人の雌に対して多くの雄が集まってしまう傾向にあるのだ。
 もし動物的な本能が倫理観を駆逐、あるいはそもそも貞操感というものが彼らの間で発達していなければ、それは一人の雌の出産の機会と遺伝子的な多様性を効率的に高める結果となっただろう。
 しかし、彼らにとって一人の雌を共有するという行為は許されない。
 むしろそれは別の本能により強く反発されている。フェロモンに誘発された雄は、自分が目をつけた雌に別の雄が近づくと強い闘争心を発揮し、これを排除しようとするのである。
 ゆえに発情期の雌は、基本的に特定の雄としか交尾しない。また、これが婚姻関係に及ぶと、以後の発情期も継続的に同じ固体としか生殖行為を行わないため、多くの雄が雌を得られず一生を終えるという結果をもたらすのである。
 強い雄だけが子孫を残す権利を得る。まさしく自然界の掟に則った彼ららしい構造ではあるが、雌を得られなかった雄は無残である。耐え難い雌の誘引を感じながら、必死にそれに耐えなければならない。
 単独行動の多い雄であればそれほど影響は大きくないが、集団の中の雄ならば目も当てられない。テリトリーの中のボス――――集団に複数体雌がいれば、ボスもその数が存在する。これについては後述の雌の住み分けを参照――――に、睨まれない様、性的欲求すら隠さなければならないのだ。もしボスのオンナに秋波を送っている事がバレようものなら……夜兎族を知るものならば、末路は容易く想像できよう。
 その点、雌同士は実に穏便に住み分けがなされている。周囲に複数の雌がいても、雄はその内の一体のフェロモンにしか誘引されない。どういった条件によりその選択がなされているかは未だ解明されていないが、雌同士が同じ雄を取り合うと言う事はない。つまり、発情期に限れば、雄の浮気は絶対にあり得ないのだ。
 女はズルイ、と言うのは種を超えた真理なのかと思われがちだが、実は雌にも相応の不利益が生じる事がここ数年で新たに発見された。
 実は女の敵は女なのではなく、女の敵も男だったのだ。




正しい兎の保健体育02





「はつ……じょう、き?」
 は顔を引きつらせて呟くと共に、阿伏兎から遠ざかるように後ずさった。
 近寄らないでよと言わんばかりの動作だが、待て待て、この状態でどうやって手ェ出せって言うんだと、逆に反論したくなった。
 散々に破壊尽くされ物が散乱した部屋の中、地面に横たわる阿伏兎は満身創痍。加えて、両手両足をがっちりと荒縄で縛られている。
 この部屋の惨状と阿伏兎の様子を見れば、あの後なにが起こったか想像に難くない。
 突如、野獣と化した阿伏兎を、は夜兎の本能で敵と判断した。
 ゼロ距離からの発砲、斬撃。ありとあらゆる武器から砲煙弾雨を阿伏兎に向けた。
 勿論、阿伏兎とて欲望を果たすためむざむざやられたわけではない。抗戦の内にマウントポジションを取り、のスリットを引き裂く所まで至ったのだが、完全にキレたに腹蹴りされ、悶絶している所を徹底的に潰された。
 そもそも――――こちらが性交目的で襲っているのに対し、あちらは殺すつもりで抵抗するのだから、いくら男女の力の差があるとは言え、力付くで組み伏せるのは至難の業である。
 結局はトドメとばかりに刀でバッサリやられて、こうしてお縄に付く羽目になったのだ。
 が発情モードから戦闘モードに移ったせいか、微かにフェロモンの効果が薄れ理性を取り戻した阿伏兎だったが、の汚らわしいモノでも見るような視線に、いっそもうしばらく理性を失っていた方が良かったのではないかとさえ思えた。
 罪悪感と自己嫌悪。
 お願いだから、そんな汚物を見るような目でオジサンを見ないでくれ。泣いちゃうから。
「自覚なかったのか?」
 話題を逸らそうと尋ねると、はぶんぶんと首を横に振った。そもそも夜兎に発情期などがある事すら初耳らしい。
 保健体育の授業をサボったからだ――――そんな冗談を言いかけて、止めた。
「ないよ……。だってヘンなのはそっちだもん」
 それについては異論はない。
 が、阿伏兎の知る知識によれば、雄が狂うのではなく、雌が狂うのである。
 そもそも種の繁栄のために雄同士を殺し合わせるなど、一体どんな破壊衝動の末路だ。
「しかし……自覚がないんじゃ、さっさと逃げた方がいいかもな」
 真剣な阿伏兎の眼差しを受けて、がきょとんと目を丸める。
「どっかの星で一ヶ月くらい身を隠した方がいいんじゃないか。いや……、一つの星に留まるのは得策じゃないか。こういう時のアイツは常人離れして鼻が利くしな」
 ぶつぶつと呟きながら思考を巡らし、阿伏兎はふむ、と頷くと、自分のデスク――――今は破壊されて部屋の隅で潰れているが――――の方を顎先でしゃくって見せた。
「一番上の引き出しに小型船の鍵が入ってる。そいつですぐにここを離れろ。手持ちがなければ俺の部屋の金庫を持って行け。当面の生活には困らないだけある。暗証番号は――――
「ちょ、ちょっと、待ってよ!」
 淡々と脱出計画を語る阿伏兎を、は慌てて遮った。
 よく分からないよ、と困惑した顔。その表情にキラキラと例のエフェクトが戻りつつある。止まっていたのフェロモンが発散され始め、阿伏兎の脳を刺激しているのだ。
「いいから早く行け!」
 阿伏兎は幻惑を振りほどくように、怒鳴り声を上げた。
「だって……」
「だってもさってもねェだろーが。ガキ生みたいっつーんなら止めねェけどな」

 コツ、コツ、と緩慢な――――だが、よく響く足音が遠くから迫る。
 口元に浮かんだ笑みはいつも通りに見えるが、近しい者だけが知っているわずかな差異で、それはひどく上機嫌な証である。
 一本だけぴょこりと反り立ったアホ毛が、まるで極上の獲物を狩るような慶びに震えていた。
 感覚が研ぎ澄まされる――――
 まるで、自分以上の剛なる者を前にした時のように。
 枯渇した喉が水分を求める貪欲さで。だが確実に、追い詰めていく。

「奴が来るぞ」
 切羽詰った表情で短く告げられた――――その一言のみで、全てを理解した。
 遠く響く足音と、上機嫌な鼻唄など知る由もないが、未だかつてない危機が近づいている事は分かる。
 それはきっと殺人的な笑みを浮かべて、
「さあ……、保健体育の授業を始めようか」
 そんな事を言うのかもしれない。




end


というわけで、次回奴がやってきます(笑)
大変お待たせしました。
ヒロインの皆様は超逃げてください。