Text

!CAUTION!
この話には暴力的な表現が含まれています。
兄ちゃんが女々しいです。
ヒロインが相変わらずSっこ。ちょっとツンツンデレデレしてます。
苦手な方はお戻りください。




















月夜に兎・月蝕シンドローム04





 実は思いのほか自分は苛々しているのだと気づいたのは、の部屋の前で噂話に興じていた団員を、軽く屠った後だった。
 話題は――――よく聞いていなかったが、白兎という単語からを貶めるような内容だろうと瞬時に断じて、気づいたらサクッと殺してしまっていた。
 自分がこういう事をしてしまうから、ますますの師団内での立場を悪くするのだと知っていたが、どうにも団員達のいやらしい声音に腹が立って自分を抑えられなかった。
 あの容姿のせいか、は他人の目を引く。
 整った造詣であればあるほど、愛玩用の夜兎としての存在を周りに示してしまう羽目になる。
 彼女はハーフなのだし、それは単なる誹謗中傷でしかないのだが、神威のオンナという立場が更にそれに拍車をかけて謂れのない中傷を増やしてしまうのだ。
 白兎の手練手管は大したもんだ。あの団長まで虜にしちまうなんてな――――と。
 だから、神威が庇えば庇うほど、は白兎としての悪名を高める事になってしまう。それが事実でなかったとしても、のあの紅い目は己ずと白兎の名を彼女に与えてしまうのだ。
 軽快な音を鳴らしドアを開くと、見慣れた部屋が派手に荒らされていた。
 のために誂えられた特別室――――のはずが、壁にはひびが走り、家具はめちゃくちゃに倒されて床に散乱している。
 粉々に砕けたフロアスタンドと、腹を割かれたクマのぬいぐるみが、の途方もない怒りを表しているようだった。
 その当人はと言うと、部屋の中央のソファに突っ伏していた。
 ぴくりとも動かないから、眠っているのだろうか。
 神威は訝りながら歩み寄り、ソファの前に膝を付いた。
 の頬に触れようと手を伸ばしかけ――――自分の両手が血塗れである事に気づき、無造作に血を服に擦り付ける。
 そして、血の跡の残る指先で触れようと手を伸ばすと、瞬間、の身体がくるりと横を向き容赦ないパンチが飛び出した。
 それを難なく手の平で受け止めると、は眉間に皺を寄せて不機嫌そうな顔をする。
「なに? 何か用? 私、気分悪いんだけど。用がないなら帰ってくれない?」
 と。
 普段考えられないような――――仮に同じ台詞を吐くにしても、普段ならせめて頬を染めて照れ隠しっぽく言ってくれるはずだ――――邪険にする態度に神威は苦笑を漏らす。
「気分じゃなくて機嫌じゃないの?」
「煩いな。どっちだって同じ」
「ボク、はらわた出ちゃって痛いよ。痛いクマ〜」
 綿のはみ出たクマのぬいぐるみを顔の前に持ち上げて、作り声でからかう。は顔を険しくさせると、神威の手からぬいぐるみを引ったくり、後でお腹縫ってあげるってば! と両手に抱きかかえた。
、裁縫なんて出来たっけ?」
「出来るってば、そのくらい!」
 ぬいぐるみを抱えて顔を真っ赤にして怒る様が可愛らしくて、神威の顔には自然と笑みが浮かぶ。
 神威はの隣に腰を下ろすと、
「ん」
 と、促すように、自分の膝を叩いた。
「なに?」
 不審者を見るような目でが神威を見返して来る。
「膝枕してあげるよ」
 上機嫌な神威に対し、は不機嫌そうな顔をさらにしかめて見せた。
 が、そんな反応に臆する神威などではなく、男の膝枕なんてと気色ばむを無理やり押し倒して、の頭を膝に乗っける。
「何なの……ホントに」
 はぶつぶつと文句を言いながらも、素直に神威の膝の上に頭を委ねた。
 神威の指先がの後頭部を撫で上げ、さらさらと髪を梳く。そうされるのは嫌いではないのか、は心地良さそうに瞼を降ろす。
「ねえ、
「……なに」
「俺のことスキ?」
「……なにそれ」
「いいから教えてよ。スキ? 愛してる?」
「酢昆布の次くらいにね」
「ひどいなぁ」
 傷ついちゃうよ俺、などと言いながらも、神威の顔には満面の笑みが浮かんでいた。
 普段、破壊と暴力しか生み出さない指先は、何故か妙に優しくて、慈しむ様な優しげな眼差しには居心地が悪くなる。あんなに苛立って、殺意に満ちていたのに――――調子が外れる。
「……神威はどうして私に構うの?」
 視線は部屋の端に放ったまま、がぽつりと聞いた。
 神威はきょとん、と目を丸める。
「なんで? 俺、恋人には優しいタイプだよ?」
「……無理やり愛人にしたくせに」
 と、どこか拗ねた表情で顔を背ける。
「まあね」
 済し崩し的に恋人――――何故か、は気恥ずかしいのか愛人と言う――――にされたのだから、にとっては多少不本意だったのかもしれない。欲ばかりが先走って、確かに初めての行為は優しくはなかったな、と反省もする。
 だが、もはやそれは過去の事。
「でも、今は酢昆布の次くらいにスキでしょ?」
 ちゅ、と柔らかな口付けを頬に受けて――――
 嬉しそうな顔の神威を、は拗ねたような顔で睨み付けた。





end


特に話も進まず、ただいちゃいちゃしてるだけでした。