この話には暴力的な表現が含まれています。
ヒロインがドS傾向にあります。
苦手な方はお戻りください。
月夜に兎・月蝕シンドローム02
本音を言うならば、さっさとこんな所はおさらばして艦に戻って一眠りでもしたい――――そんな気分で一杯だった。
阿伏兎は初めから反対した。
いかに元老の命令だろうと、機嫌の悪いを外に出すのは危険だと。そもそも召喚の期限はまだ先なのだし、の機嫌が戻ってから行かせればいいだろう、と。
だが、神威は聞かなかった。
元老(ジジイ)の前ではいい子に出来るよね? と、子供に言い聞かせるような下らない約束をさせ、そのまま送り出してしまったのである。心配なら阿伏兎が付いて行けば? と、嫌がる阿伏兎を護衛に付けて。
は始終不機嫌だったが、神威との約束どおり元老の前では大人しくしていた。
事務的な話を事務的に応えて、それでの任務は終わった。後はさっさと第七師団の戦艦に戻るだけだったのだが――――どうしてこう、間の悪い所に間の悪い奴が現れるのだろう。
薄暗い廻廊を歩いていた二人の前に、見慣れぬ天人が現れた。
首の上には狗のような頭。名前は知らないが、おそらく第八師団の団員だ。
「アンタかい? 神威団長のオンナってのは」
男共の舐め回すような視線が、の人形のような白い顔の上を滑っていく。
「へぇ……いいオンナじゃねぇか」
好色な視線が首から下へ、胸の膨らみに注がれて、そこからなぞる様にくびれから足への曲線を辿る。
どんな妄想を男たちが脳裏に広げているのかいち早く察し、阿伏兎は視線からを守るように男たちの前に立ちふさがった。
「おい。変なちょっかい出すのは止めてもらおうか」
揉め事を起こすつもりは更々ない。こちらとて元老のお膝元で厄介事は御免だ。
だから、副団長の阿伏兎の顔を立てて、彼らがさっさと去ってくれる事を祈ったが――――あいにく狗頭と言うのは、悲しいほど馬鹿に出来ているらしい。
「あぁ? 楽しくお喋りしてるだけだろ。すっこんでろよ、オッサンは」
男の一人が阿伏兎の身体を押しのけて、の腕を乱暴に引いた。
あっとが小さな悲鳴を上げると、嗜虐心を煽られて男がクククと喉の奥で笑みを零す。
「カワイイ、カワイイ兎ちゃん。なぁ、どうやってあの神威を落としたんだ? オジサンにも教えてくれよ」
ぺろり、と狗の舌がの頬をなぞる。
「やっ、」
は嫌悪感を露わにして身を引いたが、男の腕がの両手を握り締めた。ニタニタといやらしい笑みを浮かべた顔を至近距離に寄せ、
「アンタ白兎だろ? 高級肉奴隷がどういう声で啼くのか興味あるんだよ。なあ、得意の手練手管でどうやって股間の雷槍を納めたんだ?」
卑猥な言葉と嘲笑が渦になってを襲う。
見開かれたの瞳から――――ぽろりと透明な涙が零れ落ちた。
その反応に阿伏兎は驚いた。
もしや彼女は残忍な黒などではなく、いつもの純粋なに戻ってくれたのではないかと訝った。
だが、嫌な予感は阿伏兎の想像の斜め上で現実となる。
狗共の頭が想像以上に悪かったのが理由の一つ。
そしてもう一つは――――
「ねえ、阿伏兎……。もう……殺してもいいよね?」
せっかく我慢していたが、想像以上にキレてしまったのが理由の一つ。
は涙を拭う事もせず男の顎を掴むと、両の頬を圧迫するように力を込めた。顎の骨を軋ませながら、男は驚愕と恐怖で引きつったような顔をする。
狗の舌は長い。苦しそうに開いた口の合間から、だらりと赤い舌が飛び出していた。
の白い指先がその舌を摘み、ぐっと引き伸ばすように引っ張る。
「うっ! うぐ! うぐぐぐぐぐぐぐぐぐ!」
ビチャリ、と水音がしたのは一瞬だった。
万力で引き抜かれた舌は、先端から鮮血をほとばしらせて弾力の失せたゴムのように切れた。
口から滝のように血を吹き出しながら、舌を抜かれた狗が踊る。
は無感動に片足を上げると、頭上から斜めにそれを振り落とした。
鈍器を振り落とされたように、衝撃を受けて男の頭部が地面に叩きつけられた。まるで瓜が割れるように、亀裂からじわじわと血塗れの脳漿が溢れ出す。
は汚らしい物でも見やるように、それを無造作に踏みつけた。
グシャリ、と嫌な音。
だが、はもはや一切の注意を払わず、粉々になった頭蓋を見もしない。
そして――――
「躾けのなってない駄犬には、どんなお仕置きがいいのかしらね」
頬を伝う涙を手の甲で拭い去り、嗤った。
完全にスイッチの入ってしまったを前にして、阿伏兎は独り思う。
嗚呼、だから止めとけって言ったじゃねェか、あのスットコドッコイ。
何が護衛だ。何がお守りだ。
一体、誰からこの殺人鬼を、守れと言うのだ――――
end
股間の雷槍とか(笑)
ギャグみたいですみません。でも使ってみたかった!
神威は己の漲る雷槍を徐に×◎△□☆