この話には若干、性的な描写が含まれます。
こちらから制限を設けませんが、自己責任でご閲覧ください。
月夜に兎06
くぐもった呻き声。擦れる度にじゃらじゃらと鳴る鎖の金属音。かすかに香る血の匂い。
おおよそ恋人達の初めての同衾には似つかわしくない、色気のない空気が部屋中を満たしていた。
唇から滴る血は、無理やり口付けたのを、に噛み付かれて出来たもの。その血の味を確かめるように神威はぺろりと唇を舐め上げ、ベッドの上にを押し倒した。
は必死で抵抗するが、両足は神威に馬乗りになられて動かず、鎖を千切られた腕も今はベッドに縛りつけるように神威の両腕に拘束されている。
神威は鼻先をの首元に埋めると、噛み付くような荒々しさで首筋を吸った。
久しく感じていない女の匂いに、知れず気分が昂揚する。
今までは性欲を満たすためだけに女を抱き捨てる事もあったが、今回ばかりはわけが違う。こんなにも抱きたいと欲した女は初めてだ。
の手首を片腕でねじり上げ、空いた手での服を引きちぎった。容易く裂けたシャツの合わせ目から、ボタンがそこらじゅうに飛び散る。胸を覆っていた下着をもどかしそうに剥ぎ取り、熱に浮かされるようにの胸元に吸い付いた。
「やっ……やぁ」
羞恥に顔を真っ赤にさせ、は神威の顔を振りほどくように身体をねじらせる。が、自由を奪われた体勢で、それを拒む事など出来ようはずも無い。
神威の漏らす荒々しい呼吸音を聞きながら、はやだやだと泣きじゃくるような声でただ拒絶の言葉を繰り返した。
「そんな声を出しても、よけい男を煽るだけだよ?」
この女を啼かせて、善がらせて、壊すほどに穿ってやったら、どれほど心地よいだろう。獲物をいたぶる様な嗜虐心が心を満たし、神威はぞくぞくと背筋を震わせる。
の身体に更なる恐怖と嫌悪を植えつけるように、じっくりと指先で身体の線をなぞり、舌先で舐め上げる。はまるで苦痛に耐えるかのような顔で、小刻みに身体を震わせ、ただその感触に耐えた。
そして、神威の指先が足の付け根に届いた瞬間、はハッと弾かれるように顔を上げた。
「やだ! 離せ! 離してよ!」
一層強い抵抗で、両手足をばたつかせ神威の侵攻を防ごうとする。
だが、そんな風に獲物が抵抗すればするほど、狩る者の愉悦に繋がる事をは理解していない。
神威は酷薄な笑みを浮かべると、性急な動作での下着を破り去り、その中心に己の滾る熱の塊をあてがった。
何をされるのかを察し、の身体が強張る。
「や、いや、やだぁ!」
の静止の声を完全に無視し、神威はすうっと浅く息を吸い込むと、一気に貫くように自分の熱をの中に押し込んだ。
「あああああああ!」
絶叫と共に弓なりに反るの背中。
その背に腕を回し、神威は乱暴な動きでの身体を穿った。
の中はきつく、男を受け入れる準備など全く出来ていない。その中に一方的に熱を打ち込むのだから、それは苦しさを伴う行為だった。だが、そんな違和感の残る挿入にも、女を無理やり犯すという背徳的な行為が愉悦となって快楽を運ぶ。
やがての渇き果てていた女の中心に潤みが生まれてきた。
こうまですれば大抵の女は、拒みながらも快楽を得るものだがは違った。
ただただ痛みを訴え、抜いて離してと暴れる。
怪訝に思いふと視線を落とすと、それもそのはず、腿を伝う潤みは快楽の蜜などではなく破瓜の鮮血だったのだ。
「君……処女だったの?」
思いも寄らなかったとばかりに漏らした神威の問いに、はカッと火がつくように赤面した。怒りと羞恥に肩を震わせ、目頭にうっすらと涙を浮かべ、屈辱を忍ぶように唇を噛み締める。
毒の口付けをするような女なのだから、てっきりそういう手管も使うものだと思い込んでいたのだ。
神威はカリカリと米神を掻くと、ゆっくりと労わるようにの中から身を引いた。
そして、
「ごめんね」
ふわりと羽が触れるようにの頬に口付けを落とすと、まるで何事も無かったように身支度を整え始める。
そしてもう一度、振り返らないままごめんと告げると、そのまま部屋を後にしたのだった。
取り残されたは奪われた喪失感と、途端に見せた神威の優しさに大いに混乱しながら、感情のままに流れる涙を止める事が出来なかった。
end
これ以上書くと裏に行きかねない……
と言うわけでも無いですが、寸止めで。