Text

!CAUTION!
兄ちゃんがSっ子です。
問題ない方のみお進みください。







































恋人の躾





 がちゃりと無機質な音を立てて絞められた鉄の首輪に、はさぁっと顔を蒼白にされた。
 ひんやりと冷たい感触のするそれの中央には鎖が伸びていて、その先を目の前の桃色の髪の青年が握っている。
「ねぇ……、私こういうシュミないんだけど……」
 顔をしかめて訴えるが対する青年は笑顔で応える。
になくても俺はあるよ。むしろキョーミシンシン」
「いや……、ねぇ、ちょっと」
 興味津々ならどうぞ同じ嗜好の方々で、楽しめばいいのではないでしょうか――――と、は表情で訴えたつもりだったが、神威はそれを理解した上での主張を黙殺した。
 の白い首にはめられた首輪を撫でながら、似合う似合うと笑っている。
 玩具にされるのが気に喰わなくて、はやめてってばと神威の手を振りほどくと、鉄の首輪に手をかけた。夜兎族であるが力を込めればこんな首輪など外す事は容易い。
 が、力を込めた瞬間、神威がの手を取りそれを制した。
「ダメだよ、
 と、穏やかながらも拒絶を許さぬ声音で言う。
「こうやって繋いでおかなきゃ、はすぐどっか行っちゃうんだから。これは躾の一環」
「躾って」
 眉根をひそめたの前に、神威はすっと指を三本立てて見せた。
「三回」
「は?」
「三回。昨日、が独り歩きして、ヘンなのに絡まれた回数」
「あれは……! 何もなかったよ! ちゃんと自分で撃退できるし」
 見られていたのか、とは焦った表情を作る。
 この容姿のせいか、変な連中に絡まれるのはしょっちゅうだ。当然、が負けるはずなどないのだが、神威はが絡まれるというその事自体を嫌う。だから阿伏兎なり何あり護衛を連れていけと言うのだが、はそれを嫌っていつも独りで出かけてしまうのだ。
 そういう問題じゃないんだよ、と神威はの両手を握り締めた。
 温かい手の平。だが、その両手からじわじわと力を込められていく。
「いっ……神威……、痛いってば」
 眉をひそめて訴えかけるが、神威は酷薄な笑みを浮かべているだけだ。
「ねぇ、昨日あった奴らの誰かに、こんな風にされたらどうするつもりだったの?」
「それ、は……」
「両手をふさがれたら、自慢の刀は使えないよね? 蹴りでも喰らわす? その前に押し倒されたら?」
 その瞬間、神威の足がの足元をすくい、の身体はかくんと地面に落ちた。その上に跨るように膝を付き、神威が覆い被さる。
こうなってしまえば蹴りも繰り出せない。両手も駄目。空いているのは口くらいだ。
 いっそ本気で噛み付いてやろうかと、ぎりぎりと両手を締め上げてくる神威に腹が立っては唇を開いたが、攻撃の隙を与えず、神威は徐に自分の唇を重ねた。
「ん!? んんっ……!」
 わずかな隙間をこじあけるように、舌をねじ込まれる。自分の舌を引っ張り出され、最後の武器である牙さえも封じられる。
 身体中の生気を搾り取るように舌を吸われ、の身体からゆるゆると力が抜けていった。
 やがて――――飲みきれなかった唾液が唇の端から零れる頃、ようやく神威は唇を離した。
 どう? と一切抵抗できないかったに、絶対の支配者のような顔で問いかける。
「……ヒドイ」
「ヒドくなんかないよ。俺が敵なら、はとっくに死んでるか犯されてる」
 だから優しいでしょ? とケラケラと笑い声を上げる神威を睨みつけながらも、目尻に涙が浮かんだような顔ではまったく効果がない。
 悔しいが神威のいう事は事実だ。負けたら最後。負けた者には、言い訳も拒絶も出来ない。
。お前の飼い主は誰?」
 神威はの鉄の首輪を撫でながら、目を細めた。
「俺はね、自分のものが勝手にどっかいっちゃうのも、誰かに手を出されるのも嫌なんだよ?」
 お前は俺のものなんだから――――
 諭すような、子供に言い聞かせるような優しい声音で、神威は敗北者の定めを口にする。
「触れるのも、壊すのも、生かすのも、殺すのも――――全部、俺だけの特権。わかる? 他の奴にも、にだって、そんなのは許されてないんだよ?」
 まるで人権なんてクソ喰らえとでも言わんばかりの暴論を吐きながら、神威はの首筋に唇をあてた。所有の証を残し、鬱血したその色を満足そうに眺める。
「俺のために生きて。俺のためだけに死んで。俺のために呼吸して、喰らって、殺して、泣いて、笑って」
 お前は俺の“恋人”だよ――――





end


兄ちゃんにとって、モノ=玩具、恋人、愛人、ペット、アクセサリーで
区別がないんだと思う。
そもそも何かに執着しない性格っぽいので、
たまたま気に入ったものがあったらそれは当然自分のそばにあって当たり前。
自分の思い通りにならないなんてあり得ない。
そんな暴論のお話。